【AI小説断章】評価システム

和也は昼休み、校舎の片隅で明日香の姿を見つけた。普段は目立たない彼女が、一人で掲示板の前に立っている。そこには、統合教育システムが更新したばかりのクラス評価の一覧が貼り出されていた。

「……」
明日香は無言で、自分の名前の隣に並ぶ数字をじっと見つめていた。その評価は明らかに低い。「集中度：D」「課題遂行率：C-」「総合評価：D+」。他の生徒たちはその横を通り過ぎながらも、「やっぱりね」といった表情で小声で何かを囁いている。

和也はその場に足を踏み出す前に、わずかに躊躇した。なぜ明日香の評価がここまで低いのか。彼女が授業中に真剣にノートを取っているのを知っている和也には、それがどうしても納得できなかった。だが、その疑問を誰にぶつけても、返ってくるのは「システムが正確だから」の一言だった。

意を決して声をかけた。
「明日香、大丈夫か？」

明日香は驚いたように振り返ったが、すぐに俯き、小さく頷いた。
「……うん。大丈夫」

その声には力がなく、和也は何かがおかしいと感じた。彼女の手に握られたタブレットには、彼女個人の詳細な評価データが映し出されていたが、そこに和也の目が止まる。ある特定の項目だけが、不自然なほど低く設定されている。「協調性：E」「責任感：E」。それは、明日香の実際の姿とは明らかに矛盾している。

「これ、本当に合ってるのか？」
和也が思わず言うと、明日香は慌ててタブレットを閉じた。

「……いいの。どうせ変わらないから」
そう言いながら、彼女は小さく微笑もうとしたが、その表情は痛々しかった。

和也は追及したかったが、これ以上言うべきではない気がして踏みとどまった。しかし、彼女の背中が小さく震えているのを見て、胸が締め付けられるような思いだった。

その夜、和也は自宅で自分の評価データを開いてみた。同じシステムが生成したはずなのに、彼のデータは整然としていて、どの項目も明らかに正確だと感じるものばかりだった。それに比べ、明日香の評価の歪みが頭から離れない。

「……これ、本当に公平なのか？」
画面を見つめながら呟いたその言葉に、自分でもぞっとするような感覚を覚えた。評価システムが掲げる「公平」は、本当に信じられるものなのか。明日香に起きていることの本当の理由は、どこにあるのか。

和也はまだ、その答えを見つけられないでいた。