【AIショートストーリー】圧迫面接
小さな会議室。四方は白い壁に囲まれ、窓はない。テーブルの上には書類がきっちりと並べられ、その隣に置かれた水の入ったペットボトルすら、不自然なほど整然としている。中央に備え付けられた蛍光灯が白い光を放ち、空気は張り詰めている。息苦しさを感じるほどの静寂が支配する中、椅子に座った体勢がどうにも不自然に感じられた。
目の前には三人の面接官が座っている。彼らは書類を手にしているが、視線は一瞬たりともこちらを外さない。その目には、探るような、試すような光が宿っている。初老の男性が中央に座り、無表情で腕を組んでいる。まるでその沈黙自体がこちらを試しているかのようだ。左手には中年の女性。細いフレームの眼鏡越しに、手元のノートへ何かを書き込みながら、ふとこちらを一瞥する。そして右側には若手の男性。涼しげな顔に小さな笑みを浮かべているが、その目にはどこか意地の悪い色が見える。
「まず、自己紹介をしてください」
若手の男性が口を開いた。口調は柔らかいが、その声には妙な冷たさが混じっている。
緊張で固くなった喉を無理に開き、自分の名前と経歴を話し始める。だが、全てを話し終える前に中央の男性が腕を組み直しながら口を挟む。
「正直、それだけの経歴でこのポジションを志望するのは無謀だと思うが、その点についてどう考えている?」
声は低く、冷ややかだ。その質問の意図が単なる牽制なのか、それとも真剣な疑問なのか、判別がつかない。
「いえ、それは...」
なんとか言葉を繋ごうとするが、答えをまとめる時間すら与えられない。今度は左手の女性が、ペン先をノートから離さずに言った。
「具体的に、どのスキルで貢献できると考えていますか? 曖昧な回答では困りますよ」
追い詰められる感覚が増していく。声が震えないよう努めながら、これまでの経験と、それをどう活かすかを説明しようとするが、その言葉がどこか頼りなく感じられる。
「ふーん」
若手の男性が鼻で笑いながら軽く頷いた。その表情には評価の影は見えず、どこか挑発的ですらある。
「そもそも、あなたのやってきたことと、我々が求めていることが一致しているとは思えないんだが、そのギャップをどう埋めるつもり?」
初老の男性が再び問う。その声は先ほどよりも一段と冷たく、鋭い。
沈黙が訪れる。頭の中では必死に答えを探すが、焦りのせいで思考がうまくまとまらない。時間だけが過ぎていくように感じるが、実際には時計の針がほとんど進んでいないことに気づく。
「もう一度聞くけど、あなたがこの会社に必要だと思う理由は?」
女性が静かに、しかし容赦なく言葉を投げかける。その視線は、まるで手元のノートに記すべき新たな情報を待ち構えているかのようだ。
追い詰められる。会話の主導権が完全に相手にあると痛感する。わずかに握り締めた手が汗ばみ、無意識に爪が掌に食い込むのを感じた。
「わかりました。今日はここまでにしましょう」
突然、初老の男性が締めくくった。だが、その口調は面接の終了を告げるというよりも、こちらを静かに突き放すようだった。
立ち上がる面接官たちを見送りながら、重い空気の中に取り残された。誰もいなくなった部屋で、ペットボトルの水が、いつになく遠く感じられた。