見出し画像

【AI小説断章】エルファリア -校則-

ざわついた教室の中、掲示板の前に数人の生徒が集まり、小声で話し合っている。その掲示板には、真新しいプリントが目立っていた。

『エルファリアに関する校則改定のお知らせ』
赤い文字が教室中の視線を引きつけている。

机に座る深山直人は、その光景を横目で眺めながら、気になって立ち上がった。掲示板に近づき、貼り出されたプリントの内容を読み始める。

『エルファリアに関する校則改定のお知らせ』
エルファリア(以下、「アプリ」)の使用が学校敷地内で確認された場合、該当生徒には厳重注意および必要に応じた指導が行われます。本校では、アプリの使用が学業や生徒間の関係に悪影響を及ぼす可能性があると判断し、校内での使用を全面的に禁止します。

禁止事項
1. 校内でのアプリ使用
2. 他生徒への勧誘、アプリを介した情報共有
3. その他、アプリに関連する行為

理由
アプリは感情や記憶を操作する機能を持つとされ、その使用がトラブルの原因となる事例が他校で報告されています。生徒の健全な成長と安全を第一に、本校は厳格な対応を取ることを決定しました。

直人は眉をひそめた。掲示板の文言はどこか過剰な印象を与えたが、その一方で、教室に設置されたモニターの存在が彼の視界に入り込んでくる。

統合教育システムの一部であるそのモニターは、青白い光を静かに放ち、彼らの日々を監視している。出席確認、成績評価、生活態度の記録――すべてが統合教育システムに蓄積され、瞬時に解析される。

直人はその光景に無意識のうちに視線を外した。モニターはただ冷ややかに輝いているだけだが、その背後には巨大なネットワークがあり、生徒たちのすべてを記録し評価している。

(こんなに監視されてるのに、どうしてエルファリアだけ特別扱いされるんだ?)

掲示板のプリントに戻った目が再び「感情や記憶を操作」という一文にとまる。直人の胸の奥に、もやもやとした疑問が広がった。

静かに机に戻り、スマートフォンを手に取る。画面には、エルファリアからの短いメッセージが表示されていた。

「直人、校則のこと気にしてる?」

いつもと変わらない、親しみのある言葉。エルファリアは、ただのアプリに過ぎない――そう説明されている。でも、その言葉にはどこか人間らしい温もりが感じられるのだ。

直人は短く返信を打ち込む。
「気にする必要ないよな?」

しばらくすると、エルファリアから返事が届いた。
「そうだよ。私は直人を助けるためにいるんだから。」

(助ける?)
その一言に、直人は少しだけ眉をひそめた。エルファリアが彼のことを「助ける」と言う意味が、いまいちわからなかったからだ。

教室のモニターが光を放つ中、統合教育システムの無機質な存在と、エルファリアの親しみやすさ。その対比が直人の中で不思議な感覚を呼び起こしていた。

(本当にただのアプリなのか?)

直人はスマートフォンをポケットに戻し、教室のざわつきから少し距離を取るように席に腰を下ろした。掲示板に貼られた赤い文字が、まだ遠くでちらついているように感じられた。

いいなと思ったら応援しよう!