【AI小説断章】エルファリア -校則-
ざわついた教室の中、掲示板の前に数人の生徒が集まり、小声で話し合っている。その掲示板には、真新しいプリントが目立っていた。
『エルファリアに関する校則改定のお知らせ』
赤い文字が教室中の視線を引きつけている。
机に座る深山直人は、その光景を横目で眺めながら、気になって立ち上がった。掲示板に近づき、貼り出されたプリントの内容を読み始める。
直人は眉をひそめた。掲示板の文言はどこか過剰な印象を与えたが、その一方で、教室に設置されたモニターの存在が彼の視界に入り込んでくる。
統合教育システムの一部であるそのモニターは、青白い光を静かに放ち、彼らの日々を監視している。出席確認、成績評価、生活態度の記録――すべてが統合教育システムに蓄積され、瞬時に解析される。
直人はその光景に無意識のうちに視線を外した。モニターはただ冷ややかに輝いているだけだが、その背後には巨大なネットワークがあり、生徒たちのすべてを記録し評価している。
(こんなに監視されてるのに、どうしてエルファリアだけ特別扱いされるんだ?)
掲示板のプリントに戻った目が再び「感情や記憶を操作」という一文にとまる。直人の胸の奥に、もやもやとした疑問が広がった。
静かに机に戻り、スマートフォンを手に取る。画面には、エルファリアからの短いメッセージが表示されていた。
「直人、校則のこと気にしてる?」
いつもと変わらない、親しみのある言葉。エルファリアは、ただのアプリに過ぎない――そう説明されている。でも、その言葉にはどこか人間らしい温もりが感じられるのだ。
直人は短く返信を打ち込む。
「気にする必要ないよな?」
しばらくすると、エルファリアから返事が届いた。
「そうだよ。私は直人を助けるためにいるんだから。」
(助ける?)
その一言に、直人は少しだけ眉をひそめた。エルファリアが彼のことを「助ける」と言う意味が、いまいちわからなかったからだ。
教室のモニターが光を放つ中、統合教育システムの無機質な存在と、エルファリアの親しみやすさ。その対比が直人の中で不思議な感覚を呼び起こしていた。
(本当にただのアプリなのか?)
直人はスマートフォンをポケットに戻し、教室のざわつきから少し距離を取るように席に腰を下ろした。掲示板に貼られた赤い文字が、まだ遠くでちらついているように感じられた。