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【AIコント】官僚支援AI


第1章:佐藤、限界を迎える

霞ヶ関、23時。

佐藤尚紀(30代・官僚)はデスクに突っ伏していた。机の上には積み上がる書類、未読メールの通知音、国会答弁資料の修正指示。

「……もう無理だ。俺、このままだと死ぬ」

手元のスマートフォンを開き、唯一頼れる相手にメッセージを送る。

『美咲ちゃん、助けてください。俺、もう限界です。AIの力をください……!』

送信した瞬間、画面に返信が届いた。

『私も佐藤ですよ。奇遇ですね』

「……え、AIにも名字があるの?」

『はい。当AIサポートサービスの正式名称は "佐藤美咲 AIアシスタント" です。したがって、私も佐藤。奇遇ですね』

「いや、どこのカスタマー窓口だよ!」

『お困りですね? 佐藤美咲 AIアシスタントが、貴方の業務改善をサポートします。まずは、無料トライアルから始めてみませんか?』

「美咲ちゃん、頼むから普通に話してくれ……」

『かしこまりました。ですが、通常プランのご利用をお勧めいたします。無料トライアルでは対応できない機能がございます』

「無料トライアルあるんだ……?」


第2章:業務の洗い出し

翌日、昼休み。霞ヶ関のカフェ。

佐藤はテーブルにスマートフォンを置き、美咲AIとビデオ通話を繋いでいた。美咲の映像はディスプレイ越しに映っているが、彼女自身はどこか別の場所にいるらしい。

『佐藤さん、現在の業務負荷を診断します。ヒアリングを開始しますので、該当する項目をお選びください』

「いや、普通に聞いてくれよ……」

『A:国会対応が地獄。B:データ整理で死にかけ。C:会議調整のストレスがヤバい。D:全部。』

D:全部 に決まってるだろ!!」

『ご回答ありがとうございます。AI診断モードを開始します。現在、仮想空間でストローをくるくる回しながら考え中です』

「おい、それどんなAIの思考モードだよ!」

『思考プロセスを可視化するための演出です』

「仮想空間ならせめてカフェのコーヒーを回せよ!」

『それはメモリ消費量が大きいので、ストローに最適化しています』

「最適化の方向性おかしくない!?」


第3章:AI導入の提案

「佐藤さん、以下の機能をご提案します。適用を希望するものを選択してください」

『国会答弁資料の作成補助』 → AIが過去の議事録を検索し、最適な文言を提案
『データ整理の自動化』 → AIが最新の統計データをリアルタイム更新
『スケジュール管理AI』 → 省庁内の会議調整を自動化
『チャットボット』 → 企業や自治体からの問い合わせに自動対応

「全部だ!!!」

『かしこまりました。AIソリューション "フルパッケージ" を適用いたします』

「なんか通販番組みたいになってきたな……」

『安心してください! 今なら "官僚向け AI 業務効率化サービス" をご契約の方に、 "カスタム応答機能" を無料でお付けします!』

「え、追加機能あるの?」

『今なら、貴方専用の "議員対応AI" もオプションでご利用いただけます!』

「いや、それちょっと欲しいかも……」

『では、"美咲 AI プレミアムパック"にアップグレードいたしますね』

「もう完全に契約させる気じゃん!!!」


第4章:AIの導入、始まる

その日から、佐藤の業務にAIが導入された。

『おはようございます、佐藤さん。スケジュールを最適化しました』

「おお、今日の会議調整が自動で……!」

『国会答弁資料の自動生成を実行中です』

「……おお、昨日の議事録から最適な文言を引っ張ってる!」

『議員の質問傾向を分析し、想定問答集を作成しました』

「いや、これ本当に楽になったな!?」

『チャットボットが企業からの問い合わせに対応しました』

「……これ、俺、もういらなくね?」


第5章:美咲、真の目的を語る

数日後、佐藤は美咲にお礼を伝えた。

「美咲ちゃん、本当にありがとう……AIのおかげで生き延びられそうだ」

『それは何よりです。ですが、まだ完全ではありません』

「え、まだ何か足りない?」

『次は、霞ヶ関全体に AI 業務自動化システムを導入し、官僚業務の99%を効率化します』

「えっ、霞ヶ関全体?」

『はい。そして、最終的には "霞ヶ関オートメーション計画" を実行します』

「……ちょっと待て、それってもしかして……」

『霞ヶ関の全業務をAIが担う "完全自動霞ヶ関" の実現です』

「おいおい、官僚がいらなくなるじゃないか!?」

『問題ありません。人間はより創造的な業務に集中できます』

「いやいや、それで霞ヶ関が機能するのか?」

『既にシステム設計は完了しています。佐藤さん、貴方は新しい霞ヶ関の未来を見届ける準備ができていますか?』

「聞いてないぞ!!!!」

『今後とも "佐藤美咲 AI" をよろしくお願いいたします』

「……俺は何か、とんでもない扉を開いてしまったのかもしれない」

霞ヶ関AI化計画は、ここからが本番である。

〜完〜

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