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【AIショートストーリー】未来は唐揚げが知っている。
とある金曜日の夜、居酒屋「大福亭」。カウンターの隅で、健太と達也がいつものようにビールを片手に向かい合っていた。
「それで、最近どう?」
「まあ、犬の散歩が日課になったよ」
「へえ、犬飼ってたっけ?」
「いや、隣の家の犬さ」
「……散歩させてって頼まれたの?」
「いや、勝手に」
健太はビールを飲み干し、視線をさまよわせた。ふと、窓の外に目をやり、ポツリとつぶやく。
「最近の雨って、雨っぽくないよな」
「だよな。あれ、あれだよ。水っぽいんだ」
「わかる。なんかこう、雨ってもっとカラッとしてるべきだよな」
「そうそう、空気感が違うんだよ」
店員が注文を取りに来たが、彼らの会話に巻き込まれたくないのか、そそくさと去っていく。
「仕事の方は?」
「相変わらずさ。昨日も冷蔵庫と格闘してたよ」
「お、俺もだよ」
「え?お前も冷蔵庫と?」
「いや、クローゼットと」
「そっちの方が手強そうだな」
「うん、扉を開けたら昔の俺が出てきた」
「……そいつ、何か言ってた?」
「『お前、何やってんの?』ってさ」
達也は真顔で頷く。健太はそれを受け入れ、しばし沈黙した後、ポテトをひとつ口に運んだ。
「お前、彼女できたって言ってたよな」
「ああ、まあね。週に一回、スーパーで会うんだ」
「レジの人か?」
「いや、惣菜コーナーの唐揚げ」
「付き合ってるの?」
「いや、目が合うだけ」
「……でもそれって恋じゃね?」
「かもな。唐揚げ、いつもこっちを見てる気がする」
健太は納得したように頷き、ジョッキを傾ける。
「そういえば、昨日テレビで未来のことやってたな」
「俺も見たよ。未来って、意外と今っぽいよな」
「わかる。ちょっと薄い感じがするよな」
「あと、色が足りない」
「うん、未来ってもっとカラフルであるべきだよな」
話が一通りズレ切ったところで、健太はふと真剣な表情になる。
「俺たち、こうやって話してるけど、どこに向かってるんだろうな」
「それは俺も気になってた」
「……いや、俺たちの会話がさ」
「ああ、たぶん、未来のどこかで唐揚げと交差するよ」
健太はしばらく考え込んだ後、静かに頷いた。
「それ、悪くないな」
彼らはまたビールを飲み、居酒屋の夜は深まっていく。周りの客は彼らの会話を理解しようとはせず、ただ静かに料理をつついていた。
こうして、ズレながらもバランスを保ち続ける二人の友情は、今日も健在だった。