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【AI小説断章】葉月のノート

o1が生成した一日シリーズのコピーライター編を踏まえて、その一部を4oで小説の場面として別途展開したものですが、o1のものとはいくらか異なった話になっています。
最初のバージョンには4oが作ったコピーもありましたが、相変わらずの論外レベルなので登場させないようにしました。


10:30 AM – 突然の着信

葉月はA社のネーミング案を考えながら、コーヒーを片手にデスクでPCを眺めていた。
「ナチュラルで健康的、でもスタイリッシュで、カジュアルすぎず、それでいて個性的……」
クライアントの要望をすべて満たそうとすればするほど、言葉が制約に縛られて自由を失っていく。

「よし、一回リセットしよう」

そう呟いた瞬間——デスクの電話が振動した。

営業・市村からの内線。
嫌な予感がする。
市村からの連絡は、大抵「急な修正」「クライアントの気まぐれ」「方針変更」のどれかだ。

葉月は一度、深く息を吐き、受話器を取る。

「葉月さん、今ちょっといい?」

市村の声は、予想通り少し気まずそうだった。

「……どうしました?」

「B社の案件なんだけど……昨日OK出たはずのコピー、やっぱり変更になりそう

「え?」

思わず椅子を引き直す。
昨日、チームで徹底的に詰めて、プレゼン資料までまとめたのに?

「B社、昨日の時点では『カジュアルなトーンでOK』だったよね?」
「そう、昨日まではな。でも今朝になって、“やっぱり信頼感を重視したい” って言い出してさ」

「いやいやいや、昨日まで“カジュアルで親しみやすいトーンが大事”って言ってたじゃないですか」

「そうなんだけど……上層部が、競合のC社の広告を見て“うちももっと堅い路線にするべきじゃ?”って言い出したみたいで」

——出た。競合見ての右往左往。

広告業界では珍しくない話だが、自分たちのブランドの方向性も定まらず、競合が何かをやるたびに方針が揺らぐ クライアントは、正直やっかいだ。

「で、どこまで修正を?」
「とりあえず、今のコピーの“軽い雰囲気”を抑えて、もう少し“落ち着いたトーン”に変えてほしいって話」

葉月は眉を寄せた。

「軽さを抑えるって、どのレベルですか?」
「“やっちゃえ”みたいなフレーズはNG。あと、“楽しい”とか“気軽”って言葉も、ちょっと控えめにって」

「……つまり、“カジュアルすぎず、でもカッチリしすぎず、でも信頼感を出して、なおかつ親しみやすい感じ”ってことですか?」

「まあ、そんな感じ……だな……」

市村自身、これが無茶な要求だとわかっているらしい。

葉月はデスクの上のペンを回しながら、ため息をついた。

「わかりました。とりあえず、社内で方向性を再検討します」

「悪いね、ほんと。俺も“どっちやねん”って思ってるけど、上がそう言うからさ……」

電話を切った瞬間、葉月はそっとデスクに突っ伏した。

「昨日までOKだったものが、翌朝にはひっくり返る」
広告代理店では、よくあることだ。
しかし、理不尽であることに変わりはない。

「……またやり直しか……」


10:45 AM – クリエイティブチームの召集

「またB社?」

隣の席の藤井(アートディレクター)が顔を上げた。
すでに察していたらしい。

「市村さんから電話が来たって時点でね……で、今度は?」

「“やっぱり信頼感が大事”らしいですよ」

「は?」

「で、カジュアルすぎるコピーはNG。堅すぎず、でも親しみやすく、でも信頼感を出して、なおかつ競合との差別化も……」

「……もうさ、“どっちなんだ問題”だな」

藤井が頭をかく。

「真奈さん(クリエイティブディレクター)呼ぶ?」

「ですね。方向性を整理しないと、また振り回されます」

藤井が内線をかけ、真奈デザイナーの彩花が合流する。
4人がミーティングスペースに集まり、ホワイトボードの前に立った。


11:00 AM – ブレスト開始

「さて……B社の『また方針転換しました事件』について、方向性を整理しましょうか」

真奈がホワイトボードに「B社」「カジュアル」「信頼感」「競合との差別化」と書く。

「そもそも、“信頼感”って何?」藤井が腕を組む。
「競合のC社がやってるのは、金融系らしい厳格な“信頼感”。でもB社がそれをやっても勝ち目がない」

「だからB社には、B社らしい“信頼感”が必要」葉月が頷く。

「じゃあ、その“B社らしい信頼感”って?」

「安心して使える。でも、親しみやすい。それが競合との差別化になる」彩花が言った。

「……つまり、カッチリした“銀行の安心感”じゃなく、日常的に使いながら自然と“信頼”できるってことか」

「そう。むしろ、“考えずに使える”ことが安心感につながる」

藤井がホワイトボードに書き足す。

「使いやすいことが、そのまま信頼感になる」
「安心感をアピールしすぎず、“普通”に使える空気を作る」
「決済が当たり前の習慣になれば、迷いが消える」

「この方向で考えれば、競合のC社との差別化もできるし、クライアントの“信頼感がほしい”って要望も満たせるはず」真奈がまとめる。

「そうですね。ただ……この路線で進めたとして、クライアントが“また”ひっくり返す可能性は?

葉月の言葉に、全員が微妙な表情をする。

まぁ……あるな

「その時は、その時だな……」

ひとまず、「方向性の再定義」 はできた。
しかし、最終的なコピーをどうするか? は、これからだ。

了解!それじゃあ、『コピーは会議室で生まれるか?』完全版(後半) を送るよ。


11:45 AM – コピーの本格的な議論

「方向性は決まった。“使いやすさがそのまま信頼感につながる” って路線でいく」

ホワイトボードには、すでにいくつものキーワードが書かれていた。

「考えずに使える安心感」
「習慣化が信頼につながる」
「堅すぎず、でも軽すぎない」

「……で、問題はここからだ」

葉月はペンをノートに当てながら言った。
「この路線で、具体的にどんなコピーにするか?」

「大前提として、“競合のC社との差別化”は必須だよな?」藤井が言う。
「C社のコピーは『金融機関の安心感』を前面に出してる。でも、B社はそこに寄せると負けるだけ」

「そう。だから、“いつの間にか信頼してる”みたいな方向がB社には合ってる」彩花が頷いた。

「つまり、“気づいたら当たり前に使ってる”とか、“迷わなくなる”って感覚?」

「そうだな。あと、“説明感”が出るとコピーは死ぬ”

藤井がホワイトボードを指さす。

「だから、“便利です”“簡単です”“安全です”とか、いかにも広告っぽい言葉はNG。もっと感覚的に伝わる言葉を探さないと」


12:00 PM – 言葉を探る

葉月は、ノートにいくつかのフレーズを書き出した。
しかし——

「……どれも、微妙ですね」

「うん、悪くはないけど、“これだ!”って感じがない」

藤井も腕を組む。

「たぶん、“便利ですよ”って言われると、逆に“ほんとに?”って思っちゃうんだよな」

「確かに。“当たり前のことほど、言葉にすると嘘っぽくなる”ってやつですね」

葉月はペンを回しかけて、指先でノートの端を軽くめくる。

「……だったら、もっと“体験”に寄せるのはどうです?」

「体験?」

「つまり、“財布を出すことすら忘れる”とか、“気づいたら会計が終わってる”みたいな」

「なるほどな。つまり、“何かをしないこと”がコピーになる ってわけか」


12:15 PM – 言葉のブラッシュアップ

チーム内で言葉のアイデアを出しながら、方向性を整理していく。

「“財布を開く時代が終わる”とか?」

「それだとちょっと大げさかも。“未来感”を出しすぎると、逆に今すぐのリアリティがなくなる」

「じゃあ、“財布を持たないことが普通になる”?」

「“財布”って単語を出すのはいいけど、もっと自然な言い方のほうがいいかも」

「レジで止まらなくていい、みたいな?」

「そう、それ。“何もしなくても、支払いが終わる” みたいな方向は?」

「“支払いが終わる前に歩き出せ”とか?」

「お、いいな」

藤井が反応する。

「その感じなら、“決済って行動すら意識しなくなる”みたいな視点もありかも」

葉月はノートをめくる。
アイデアは出揃ったが、どこまでブラッシュアップするかが課題だった。


12:30 PM – クライアントへのプレゼン準備

「よし、コピー案はいくつかできた」

ホワイトボードには、複数の候補が並んでいる。

「クライアントには、単に“コピー案”を出すんじゃなくて、“方向性ごとの比較”で提案しよう」

真奈がまとめる。

「競合との差別化」 を強調する案
「自然に使いたくなる」感覚を伝える案
「決済を意識しない」視点の案

「この3つのアプローチを説明して、クライアントと一緒にベストな方向性を決める形にする」

「ですね。これなら、またひっくり返されても対応しやすい」

「うん。あと、どうせまた“やっぱりもうちょっと”とか言い出す可能性あるし」

「……あるな」

全員が苦笑する。

「まあ、とりあえず昼飯行くか」


翌朝 – さらなる無茶振り

翌日、朝9時。

デスクに座った葉月のスマホが震えた。
画面には、市村の名前。

「……また?」

嫌な予感しかしない。

「葉月さん、またちょっと方針が変わったかも……」

「……はい?」

「上層部が、“やっぱりもうちょっとフォーマルでもいいんじゃ?”って話をし始めて……」

「……」

葉月はしばらく無言だった。

「またプレゼンの前日に?」

「うん、まあ……ほら、B社の人たちって、『一回決まったあとに再考したくなる病』 みたいなとこあるし」

「もうさ、“決まる前に考えません?”」

「俺もそう思う。でも、クライアントって、決まった後になって“やっぱり”って言いたくなるんだよな」

「それ、ただの後出しジャンケンじゃないですか」

「まあまあ、落ち着いて。とりあえず、ミーティング、朝イチで入れてるから……」

「はぁ……」

葉月は、デスクの上のノートを閉じた。

——“コピーは会議室で生まれるか?”
——いいえ。コピーは、決まったあとにまた揺さぶられるものです。

ため息とともに、また一日が始まる。

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