
【AI文芸】話題のない二人。
カフェのドアが開く。
外の冷たい空気が一瞬入り込み、カウンターの近くにいた客が軽く肩をすくめた。
圭吾が入ってきて、店内をざっと見渡す。
窓際の席。隼人が先に座っていた。湯気の消えかけたカップを手にしながら、外をぼんやり眺めている。
「おう」
「よ」
圭吾は向かいの席に腰を下ろし、コートのポケットからスマホを取り出す。
店員が近づいてきたので、適当にブレンドを頼む。
「寒いな」
コートの襟を軽く引っ張る。
「二月だからな」
それだけで会話は終わる。
隼人はカップを手で包み込んだまま、外を眺めていた。
歩道を行き交う人々。コートの色が重たい冬の空に溶け込んで、寒々しく見える。
「なんかあった?」
圭吾が適当に聞く。
「いや、別に」
「つまんねぇな」
「お前こそなんかあったのかよ」
「ない」
「なら聞くなよ」
隼人は言って、コーヒーを一口飲む。
しばらく沈黙。
カウンターの奥で豆を挽く音がする。
「昨日、何してた?」
圭吾が聞く。
「寝てた」
「ずっと?」
「途中で起きた」
「そりゃそうだろ」
「で、また寝た」
「動物かよ」
「夜中に起きて、コンビニ行ったけどな」
「へえ、何買った?」
「カップ麺」
「じじいみたいな生活してんな」
「お前がガキなだけだろ」
「おい」
店内には、スチーマーの蒸気が吹き出す音と、小さなBGMが流れている。
「結局、何味?」
「シーフード」
「そればっか食ってね?」
「安定する」
「わかるけどな」
店員がカップをテーブルに置く。
「お待たせしました」
圭吾は軽く頷いて、カップの縁に指をかける。
温かさを指先で確かめるようにしながら、一瞬だけ持ち上げる。
けど、すぐにまたテーブルに戻す。
「で?」
「何が?」
「今日どうすんの」
「何もしねえよ」
「まあ、そうか」
外の空が、さっきより少し暗くなっている。
沈黙。
コーヒーが減る。