【前編】みやざきミライ史 裏トーク
対談者:宮崎市役所 吉瀨 正明 × 公共とデザイン 石塚 理華
「みやざきミライ史」の裏側を紐解く対談シリーズ、前編!
運営チームが語る!本プロジェクトの発端から本音。そして学生たちの成長物語までを赤裸々トーク。
メンターとして関わった工藤美優・三井麻衣が設定したテーマをもとに、宮崎市役所の吉瀨正明さんと公共とデザインの石塚理華さんに対談していただきました!
事業のはじまり
三井:
市制100周年を迎えるにあたって、宮崎市を盛り上げよう!と、様々な準備をされたと思うのですが、どういった経緯でこのプロジェクトが始まったんでしょうか?
吉瀨:
元々この市制100周年をどう迎えるかというのは、市役所内では実は2~3年前ぐらいから動いていた中、昨年度「100周年という記念すべき節目を、次の100年に向けたまちづくりの確かな一歩とし、市民に愛され、幸せや豊かさを感じられる"宮崎市"の実現を目指していく」ということ、そのうえで「ミンナで祝う」「ミリョクの発信」「ミライへの投資」という3つのテーマ のもと進めていくことが庁内にて決まりました。
事業計画の時のモヤモヤ
吉瀨:
3つのテーマ のもと、事業を企画していく中で、個人的に、果たしてイベントを実施することだけで「市民に愛され、幸せや豊かさを感じられる"宮崎市"」は実現(達成)できるのか、完全に納得できていない部分があったというのが正直なところです。
例えば、何かを愛おしいと思ったり、幸せを感じたりする時って「みんな愛しましょうね!」「みんな幸せですよね!」みたいなことを言われて感じるものではなく、自らがその対象に対して「好きです!」「愛してます!」というような 気持ちを持つようになって初めて感じるものなんじゃないかと思っていて、行政側から一方的に想いを伝えるだけでなく、宮崎市に関わる皆さん自らが(内発的に)そのような想いを持つようになるにはどうしたら良いのだろうかというのが、この「若者ミライ提言事業」の始まりになります。
学生自身で、宮崎市を知り、好きなポイントを探していく
吉瀨:
そのうえで、宮崎市のことをまずは知っていただき、宮崎市のことを好きになるポイントを見つける行程、つまり宮崎市のことを「自分事化」するような取組みを実施する必要があるのではないか、また実施に至っては、一人ひとりに価値観を押し付けるようなことはせず、言葉になる前の「もやもや」を大切にするようなプロセスを踏む必要があるのではないか、という考えに至り、今回の事業実施に至ったところです。
今回の事業対象は、直近の宮崎市の未来を担う学生たちですが、先ほど偉そうなことを言っておきながら、やっぱり「みんな宮崎市を好きになって!」「宮崎市を愛して!」っていうのを言ってしまいそうになる場面は多々ありましたが、あえて学生たちに無理やり押し付けるのではなく、学生が好きな宮崎市のポイントや場所・ものを学生自身で見つけてもらうアプローチを取っていただきました。
100周年の式典やイベント等とは少し内容が違う、このようなワークショップを中心 とした事業を企画した意図としては、繰り返しになりますが「自分事化する」ことを促したい、ひいてはそれが、シビックプライドの醸成に繋がるのではという想いがあったところです。
三井:
石塚さんは連絡が来たときどう思いましたか?
石塚:
ご連絡いただいた時に、今おっしゃっていたような 熱い想いをメールで 書いていただいてて。こういうことやりたいんだろうなっていうのも伝わりました 。ただ自分が住んでない地域で距離も遠いなかでどのようにプロジェクトを計画し実行するのかは悩んでいました。
ただ、プロジェクトとしては政策を考えようとか、社会課題解決を最初の目的としておくのではなく、宮崎市で過ごす日常の中で学生ひとりひとりの興味関心があるところを開きながら、じゃあそれってこんな社会課題繋がっていくよね、こういう宮崎になっていくといいよねっていうところにどんどん繋げていく、そんなことを学生と一緒にできるっていいなというのははじめの段階から考えていました。
「自己表現」と問いへのアプローチ
三井:
「行政」と「デザイン」ってあまり結びつくイメージがないのですが、抵抗感はありませんでしたか?
吉瀨:
「デザイン」自体を語るような知識はないのですが、 個人的には好きな分野であるのと、直属の上司もデザインやアートに非常に造形が深い方で、自らもアーティストとして活動されてらっしゃいますし、このプロジェクトにもすごい理解を示してくださいました。
ただ、大変御迷惑をおかけしておりますが…
吉瀨’s こだわりポイント
吉瀨:
個人個人の内から出るもの、パッション的なところをうまくデザイン的なアプローチで昇華させていただきたいというところで、先月の事前発表を終えて、見事にそれが実現されていたというか、学生って本当に変わるもんだなって思いました。プロジェクト中は、学生を24時間サポート出来る環境にはなく、学生とのコミュニケーションが難しいと感じる場面も多々ありましたが、変わる子は変わっていくんだなと本当に思ったので、まさにこれはプロジェクトを企画していただいた「公共とデザイン」石塚さんやメンターで入っていただいた工藤さん・三井さん、ウフラボの平野さんのおかげだなと感じており、感謝の気持ちでいっぱいです。あと学生が所属する学校の先生から、参加している学生が生き生きとしてやってますねと報告を逆に受けるので、お世辞なのかもしれませんが、そのようなお声をいただいた時は本当にやってよかったなと実感しました。
対話と表現と内省
石塚:
公共とデザインの活動は、自分たちの活動をデザインであると明言することはあまりありませんし、このプロジェクトの中でも、やっていることをデザイン的なものだと学生に伝えていません。 必ずしもデザインでなくても良いとも 考えています。 こうやって問いを立てて行く。問いには必ずしも一つの答えがあるわけじゃないから、人の話を聞いて考える ・それを表現してまた内省する 。そんな繰り返しをしていくなかで深めていくことをしてもらえたらいいなと。自分が全体の進行をしてたので、学生たちに細かく入っていけなかった時間もありましたが、周りのメンターの方々のそれぞれの視点から深く学生にツッコミをいれていただき、とても助かりました。
プロジェクト エピソード
三井:
今回のプロジェクトの中で印象に残っていることはありますか?
石塚:
ある チームでは 自分が好きなもの、古着とかのzine(雑誌)を作ったり、周りの人がカフェとか調べて色々 まとめたりして、チーム内で共有したときに「意外とバラエティー豊富なお店あるじゃん」ってなったらしく。
それをきっかけに知ってたけど入れなかった店に行こうと勇気出して入ったり、新規開拓して行ってみたり、日常の中でも変化があったそうです。
またその活動をしているうちの1人が、大学で宮崎の市街地活性をゼミで取り組んでいるそうで、周りの同級生たちは「何もないからカフェ作ろう」とか、「集まる場所作ろう」みたいなこと言ってたけど、自分はすごい良いお店があることを知ってるから「宮崎いろいろお店あるよ」って言う側に回ったと話してくれました。学生が 1人の発信者として、宮崎の魅力を仲間に伝える側になっていて、すごく 嬉しかったです。
吉瀨:
あとはメンター(三井・工藤)のお二人が学生の前でしゃべってくれた時の内容に、私は感銘を受けましたね。
私は学生と10個以上違うので、大学卒業したばかりで年が近くて、さらに宮崎で活動して愛着を持ってわざわざ移住してきた!というのはめちゃくちゃすごい刺激になっただろうなと思ってます。
石塚:
そういう意味で宮崎に移住したお 2人を誘ったのも良かったです。 自分は東京に住んでいるのでプロジェクト中しか関われない、だからできれば 宮崎に住んでいる人にサポートをお願いしたいなと思っていました。そのタイミングでお二人を別の方にご紹介いただいて、 本当にタイミングが良かったです。 実際学生たちがやりたいことも 汲み取ってくれたし、現地にいる人たちの力を借りながらプロジェクトが運営できたっていうのはとても良かったです。
前編では本プロジェクトのはじまり と 進行中の挑戦や学び についてお話していきました。
ちなみに吉瀨さんは、公共とデザインの〈わたし〉をいかに生きれるか——公共とデザインに聞く、〈公共〉と〈まち〉の記事を見て、石塚さんに依頼をしたそうです。
お二人の対談から、時間はかかってでもミライを支える若者一人一人に真剣に向き合い、丁寧にシビックプライドを育てていきたいという気持ちが伝わってきますね。
さて、後編ではプロジェクトを通じて見えてきたみやざきミライの可能性についてお話ししていただいた内容を紹介したいと思います!
編集:工藤美優・三井麻衣