撮ってもらう、ということ
大学生の頃、寮に2人中国からの留学生がいて仲良くしていた。ある時1人のお部屋に遊びに行った時だった。やたらと彼女自身の写真が飾ってあった。
聞けば、誕生日に撮った記念写真だという。家族との写真や彼氏さんとの写真もあるのだが、一際、
彼女自身だけが写っている写真が印象的で。自分が好きな衣装を着て、メイクアップして、背景のセットも世界観がかなり凝っていて。
〝元気がないときは、写真を見て、綺麗に写っている自分から元気を貰うの〟そう言っていた。
ちょうど私も二十歳を迎える頃で、成人式の前撮りはしていた。けれど、違うのだ。堅苦しい記念写真のそれではなく、彼女の記念写真はもっと自由に
自分自身を表現している写真なのだ。
ある種の衝撃を受けた。
私には、こんな風に自分の為に自分の写真を残すって、なんだか気恥ずかしい感じがして、自分から
元気を貰うってことがちょっとよく分かんない感じで。ただただ〝へぇぇぇぇ~〟としか言えなかった。でも、写真に写る彼女は本当に綺麗で、なんだか羨ましいなぁという感覚も感じていた。
そして別の日、もう1人のお部屋に行くと同じように写真がたくさんあった…。
すっかり時は流れて、2度目の成人式を迎える年が来た。
昭和記念公園、雨予報は当日晴れ予報に変わり、
多少風は強かったものの、撮影の日を迎えた。
〝こびと〟という名前でラブグラフのカメラマンとして活動している、友人からそう聞いたのは去年の終わり頃だった。
写真かぁ…ちょうどもうすぐ40歳になるし、撮ってもらうのも良いかもなぁ。ふと、そう思って新緑の時期にお願いしたい、と話していた。1年で1番
好きな季節そして私が生まれた季節に。
季節が近づいてきて予定を決めようとしたらなんと、お互いに、私の誕生日その日が空いていた…!
これはもう、その日に撮ろうよ、となったのだ。
着たいワンピースが2着あって、迷った末に両方着ることに。編み物作品もいくつか持って。
その日の朝、カラスヤマ手作り市で買った桜貝の
イヤリングも持っていき。
日曜日、人の多い公園。
〝恥ずかしい…!〟なんてなるかな、と思っていたけど、ぜーんぜん全くそんな事はなかった。むしろ
ノリノリで〝こうしてみて~〟と言われたポーズをしている自分がいた。
ピンクのワンピースに着替えてからの撮影。
〝このワンピース写真で見たときはしゃいで遊んでるイメージが湧いたんだ~〟
走ったり、シャボン玉したりしながら、その言葉を聞いた時、心の中で何かの糸がするっとほどけた気がした。
いつかどこかに置いてきてしまった、
忘れていた自由を思い出して、
私の中の小さな私がにっこりしてる、不思議とそんな風に感じた。
このところハマっているアフリカ布のワンピースもとても好きなのだけど。
初めて買ったインド綿のピンクのワンピース。
実はこの日着たのが初めてで。
軽くてサラサラ涼しくて、着心地の良さにびっくりした。今年の夏はこれ、着倒そう。
もう1着買おうかな…!
たくさん撮った中からの40枚。
選ぶのだけでも大変だろうなぁ…
出来上がった写真は本当にどれも素敵で。
色々あったなぁ、40歳になるまで
色々あるんだろうなぁ、これからも
何かあったらこの写真を見てこの日のことを思い出して、乗り越えながら、楽しく40代を過ごせたら…
あの時、中国の友達が言っていた言葉の意味が
分かった気がした。
40歳の誕生日
人生の中間地点、かどうかはわからないけど
これまでの私にとっても、
これからの私にとっても、
なんだか意味のある1日だったように思う。
写真撮ってもらうの、オススメ。
もっと自分を大切にして
もっと大事に生きよう、この命。
自分の為だけに撮った写真に
前向きな力を貰えるから。