キライナオトコ

〝あはは！昨日のアンタじゃーん！〟

テレビに映っていたのは3匹のネコ。1匹のメスと
２匹のオスだ。どうやらどちらもメスのネコが気になるらしく、それぞれアピールしているのだが。
1匹のオスはグイグイ来るタイプで、しつこく付きまとったり、スキンシップを取ろうとしたりしている。が、ついにメスのネコがキレてバシッとネコ
パンチをお見舞いした。
しつこい！と言わんばかりの表情だ。

〝ネコも人間も同じだねぇ。しつこい男は嫌われんだよ〟

友人宅での飲み。麻実から缶チューハイを受けとると、そう言いながら缶を開け1口飲んだ。

もう1匹のオスが近づいてくる。メスを守るように
スッとそばに座り込んだ。何もしない。何もせずそっと寄り添っている。メスも逃げないし、嫌そうではない。

〝あぁ～。そうだよねー！そっちが良いよねぇ！〟
〝そうそう。そういう男が良いよねぇ！〟

人間の女２人、メスのネコに大いに共感している。

昨日の事だ。
朝から体がダルく、頭痛がして。
〝あぁぁ、どこにも行きたくない～
何もしたくない～誰にも会いたくない～
もぅ消えてしまいたいぃぃぃぃ〟

月に１度のこの期間。PMSってやつは本当にやっかいだ。妙に悲しくなったり、突然泣きたくなったり、いつもなら全然気にもしないことでイラッとしたり。自分が自分じゃなくなる。コントロールが
出来なくなる。かといって、病気扱いもできないし、誰彼構わずに打ち明けられる類いのモノでもない。何度〝生理前なんだもん！〟って言葉を出せずに飲み込んできたことか。

ムリだ、完全に。
そう思って午前中の講義は全て休んだ。

午後になって少し落ち着いたので大学へ向かった。
１番大きな講堂での講義、真ん中から前列は人が
まばら。みんな、端や後ろに固まってお喋りしていた。

麻実を見つけ隣に座る。斜め後ろから声がした。
〝午前中いなかったじゃん？ねぇ、どうしたの？
いなかったじゃん。何、ズル休み？ねぇねぇ、いなかったじゃん、何してたの？〟

顔見知り程度なんだけど、なんか馴れ馴れしい
ヤツ。いつもからかってきたり、おちょくってきたりと、私はあまり好きじゃないタイプ。

あぁ…いつもならテキトーにやり過ごせるのに。
一気に何かが頭まで上ってきた…

〝うっさいなぁ！！！
そういうの嫌なんだよ！ほっといてよ！！！〟

立ち上がり結構な大声で怒鳴ってしまった。

〝ごめ…ん…〟

私の周りだけ静まり返った。
大きな講堂で良かった。他はザワザワとお喋りが
続いている。

席に座ると〝カッコいーじゃーん〟と麻実が小声で言ってきた。

人の挙げ足とって楽しんでたり、からかってばかりの男が本当にキライだ。
向こうからしたら愛情表現的なものなのか？
だとしても、人の気持ちを想像できないヤツとか、
パーソナルスペースに土足で踏み込んでくるようなヤツは無理だし、そんな広い心は持ち合わせていない。
私が成熟したら、こういうタイプを可愛いヤツだなぁとか思えるようになるんだろうか？

答はNOだった。

あれから20年以上経つ。
60も過ぎて小学生がするような悪ふざけしてきやがって。当時の男ではなく別の男だが、こういう
タイプは一生変わらない人種なんだろうか。

〝ホント嫌なんで止めてください〟
低め強めのトーンで言い放った。立場なんて関係ない。イヤなものはハッキリ嫌だと言う。
私に強く言われると思っていなかったのだろう、
ただただ驚いていた。

年取ったって生まれ持った本質ってやつは変わらんのかもしれない。この人も、私も。

そうは言っても腹が立つのは押さえられない。
〝ここはキャバクラでもねぇし、私はテメーの友達でもねぇんだよ！〟

私は心の中で、暴言を吐きまくる