数学とプログラム

数学は構造を作ったりしない。定義したものの構造と性質を調べるのが数学である。

もちろん時に、構成を作ることがある。具体的な例として作ることや、反証のために作ることもある。しかし、それ自身が目的ではない。しかし、実際の数学の研究では、そういった構成によって具体的なものを研究しながら、一般論に上がって行く。一般論しかできない数学のことを、General Nonsense と言ったりする。

しかし、プログラムは数学とは違う。逆に、プログラムはある性質を持つ構造を作ることにこそ、主眼がある。それは具体的には、なにより、場と存在(0、1)によって定義付られる具体的な構造物である。

しかし数学の構造物というものは、違う。それは論理的構造物であって、論理である限り、それはどれだけの具体性も持たない。そして、その存在の基盤を持たないということこそ、数学の最大の武器なのだ。数学で最も具体的なものは数であり、その次に図形であり、次に関数である。しかし、どれをとっても既に高度に抽象化された対象であり、また、それは人類が獲得した抽象的能力そのものなのである。

ゆえに抽象は人間の認識能力のコアとなり、数学はその認識能力を人工知能に拡張する挑戦である。あらゆる記号は高次のセンサーとさえ言える。

一方、プログラムは最初から地べたにある。それは現実という大地を滑走する実体であり、そこに数学的な構造を入れることで性質を発揮するようになる。

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