リアルイベントの新しい価値

かつてリアルイベントは、マスメディアがブロードキャストするか、しないか、
そんなイベントだった。

そしてネットの時代が来て、リアルなイベントは力を失った。

しかし、個人が携帯電話を通してブロードキャストする力を身に着けた時、
リアルイベントはもう一度、力を取り戻した。

それぞれの参加者が内側からイベントの感想を発信できる、
そして、それを集めて、まとめることもできる。

ネットではマスメディアも、個人メディアも、同じスクリーンの、
同じ大きさでしかない。そこでは、イベントの大小ではなく、

参加した個々人の感想の総和の量によって、インパクトが決定される。

新しいリアルイベントは、
はっきりと発言権を持った個人が、心置きなく発言することで、

ネット上で確かな存在感を持つイベントとして描き出される。
それを見た個人がまた、そこに参加したいと思う。

そうやって現代のリアルイベントは既にあらかじめネット上で
描き出されることを前提に設計され、

それが点ではなく線になるように、感想が連携されるように設計する。

そのイベントが、それぞれの立場から、まったく別な風景を見せれば見せるほど、
そのリアルイベントは複雑な構築物としてネットに出現する。

イベントはその場でなるべく同一のものを見せるというポリシーから、
それぞれの立場からなるべく違った風景が見えるように設計される。

このように、リアルイベントは、ネットの時代を経て、
より多面的かつ多義的な複雑な構造物として生まれ変わり、

リアルに参加した個人がバーチャルなネット上で、
より深いコミュニケーションを取ることに、より価値を持たせるのである。

さらに、オープンなコミュニケーションによってイベントの姿が描かれることで、
そのイベントの価値が高まるのである。

このようにバーチャルなネット空間における発言と、
リアルイベントの価値が、相乗的に上がって行くという仕掛けこそが、

インターネットと現実空間が生み出した最大の仕掛けなのである。


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