シンボル・グラウンディング問題

シンボル・グラウンディング問題は、ロボットにとっては、現実にあるものと、シンボルの対応ということになるだろうけど、

人間の知性にとっては、そもそも現実あるものに知能がたどり着くのではなく、
知性が内部で対象を想起するわけであるから、シンボルと心的に想起されたものの対応ということになるだろう。

知性が意識にせよ、無意識にせよ、表象されたものに、言葉を結び付けるということは、構造主義の基本テーゼであって、そこではシニフィエ/シニフィアンという対応で表現される。

ではゲーム・プログラミングにおいてエージェント内部の知性を作る場合には、シンボルグラウンディングは、どこで為されるかというと、知識表現において、対象を記述することで為される。これがデジタルゲームや仮想空間における知性を作る基盤の特徴であり、長所であって、

具体的に言えば、ゲーム空間内に見えているオブジェクトには、AIのための知識表現が既になされており、地形であればナビゲーション・データが埋め込まれており、オブジェクトであればシンボルとパラメーターが添付されており、スマート・オブジェクトのように、そこで為すべき動作まで指定されているものもある。

スマート:オブジェクトやスマート・テラインまで行くと、世界の側がエージェントを制御するわけであるから、本来、人工知能が目指している方向とは違うかもしれないが、ゲームでは強力な方法であるから、頻繁に使われる。

このほかにジ事実表現など抽象的なものの表現も用意される。

シンボル・グラウンディングは、人工知能の基本問題であるから、それが仮想空間内のエージェントにおいては、どのように解決され、何が解決されないか、きちんとした説明がどこかで必要だ。

自然言語は意味が強いが、構造や運動を記述するのは苦手だ。それはだいたいのものしか表現できない。

数学は構造は記述できるが運動は苦手だ。物理学は巧みにパラメーターを時間にしているが、あれこそが物理学の発明だった。

プログラムは運動を記述するのが得意だ。ただし、意味や構造はそこまで得意ではない。対象をシンボルで捉えると言っても、enum や class 変数にしたところで、そのシンボルが対象をインデックスしているだけで、それ自体に意味が発生するわけでもなく、構造を持つわけではない。変数がどのように使用されるか(ここはなんとなくヴィトゲンシュタイン的だ)、他の変数とどのような関数で結ばれているか、でようやく決定される。シンボルはインデックスに過ぎない。

人間の頭の中で自然言語の力は強大だ。リンゴ、という言葉で記憶や、唾液まで出るというのは、いかに言葉が精神と生理に結びついているかを教えれくれる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?