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ガザ―著しく増える犠牲者と、イスラエルの平和活動家に寄り添ったジョン・レノン

 イスラエルの攻撃によるガザの犠牲者の数がとうとう5000人を超えた。2014年夏のガザ攻撃の時は50日間で死者2,251人、そのうち民間人が1,462人だった。今回は2週間余りで倍以上の犠牲者が出て、「アルジャジーラ」はその半分が子どもたちであることを伝えている。地上戦が始まれば、死者の数はさらに増えることは明らかだが、イスラエルが水や食料を断っていることもあって、戦闘が長引けば、水不足や飢餓に起因する犠牲者が現れることも懸念される。一橋大学教授で、歴史学者であった藤原彰氏(1922~2003年)は日本軍の死者の6割以上140万人が飢え死にか、栄養失調が原因の病死であったと見積もっている。(藤原彰『餓死(うえじに)した英霊たち』青木書店・01年)


 子どもたちなど市民の犠牲をもたらすイスラエルの攻撃を停止させるには、イスラエルで反戦世論が盛り上がることも重要だが、イスラエルでは極右政党が内閣に入るように、パレスチナとの共存を考える「ピースキャンプ」と呼ばれる人々の力は残念ながら弱まり、戦争に反対する声を上げにくくなっている。

 ビートルズのジョン・レノンはイスラエルの平和活動家エビ・ナタン(1927~2008)の活動に共鳴して、ナタンが「平和の船」を購入するのに寄付を行った。

エピ・ナタンと「平和の船」


 エビ・ナタンは、一貫してパレスチナ・アラブ人との平和共存を考えた人で、ジョン・レノンは「平和を我等に(Give peace a chance)のライブ・コンサートでもナタンを紹介したことがある。ビートルズの他のメンバー、ジョージ・ハリソンもナタンがラジオ局「平和の声」の設備を購入することを支援するなど、ビートルズのメンバーたちはナタンのパレスチナ和平への取り組みを評価していた。ナタンはヨルダン川西岸におけるイスラエルの入植活動がイスラエルとパレスチナの共存を損なうものとして強く反対し、ハンガー・ストライキまで行った。その意味でもジョン・レノンの彼への支援は画期的なことだったが、著名な音楽家のダニエル・バレンボイムも、ナタンを「ヒューマンな人」と称賛した。

 エビ・ナタンは、イラン南部のアバダン(アーバーダーン)でユダヤ人の家庭に生まれ、イラン空軍の兵士だったが、1948年の第一次中東戦争で義勇兵としてイスラエル軍とともに戦った。その後、イスラエルの航空会社エル・アル航空に勤務した。1966年2月28日、エジプトのポート・サイードに複葉機で領空侵犯して密入国し、そこで逮捕された。彼は、エジプトのナセル大統領にエジプト・イスラエルの和平を訴える書簡を手渡そうとした。その後もアラファトなどPLO(パレスチナ解放機構)の指導者たちとも面会し、イスラエル当局によって逮捕され、有罪になったこともあった。ナタンへの支援は、ジョン・レノンにとって彼が理想とする世界平和の達成にとって必要なことと思われたに違いない。

アラファト議長と対談するエビ・ナタン https://www.nytimes.com/.../world/middleeast/29nathan.html


 2014年4月、ジョン・レノンの「想像してごらん 国なんて無いんだと そんなに難しくないでしょう?殺す理由も死ぬ理由も無くそして宗教も無い」という「イマジン」の一節をとらえて、「ジョン・レノンは正しかった」とイスラエルの「人権のためのラビ(ユダヤ教の宗教指導者)の代表であるラビ・アリク・アッシャーマンは語った。

 アッシャーマンは「非ユダヤ人に対する振る舞い方を、神と私たちの宗教に掛けて反省する」「ユダヤ教の名において人々に対する扱いを間違うなら、それは神の名を傷つける」ともいう。彼は常々、ラビたちが中東和平を主導していくべきことを説いている。

 多くの紛争や暴力は宗教を一つの要因とするナショナリズムのイデオロギーの下に起こされてきた。今回のハマスとイスラエル軍の武力による応酬を捉えて「宗教戦争」と形容する人もいるが、宗教そのものが紛争を起こすわけではない。アッシャーマンは、ジョン・レノンのイマジンの歌詞から宗教を中心に据えるナショナリズムに訴えるイスラエル国家の行き過ぎを戒めた。パレスチナ人に対する暴力をいとわないイスラエル国内の極右を説得する役割をラビが担わなければならないとアッシャーマンは訴えている。宗教に暴力の正当性を求めるという点ではISやアルカイダなども同様だが、キリスト教にもイラク戦争を推進したアメリカの福音派がいる。

 平和は私たちの自覚や行動で創造するものであり、日々声を上げて何らかの行動をしなければならないことをジョン・レノンも語っている。


「平和はあなたが望むものではありません。それはあなたがつくるもの、あなたがすること、またあなた自身であり、そしてあなたが与えるものです。(Peace is not something you wish for; It’s something you make, something you do, something you are, and something you give away.)」平和にチャンスを与えてください(All we are saying is give peace a chance.) ―ジョン・レノン

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92丸山 夕貴子、竹内實昭、他90人


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