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今、世界が耳を傾けなければならない金子みすゞの「みんなちがって、みんないい」
2011年3月にイランで金子みすゞの詩集がペルシア語に翻訳されて出版された。その訳者のベフナーム・ジャーヘドザーデ氏は「金子みすゞの詩は人間の詩」と語ったという。これは、童話作家の矢﨑節夫氏の紹介だが、その矢崎氏の紹介ページには、下の金子みすゞによる「みんなちがって、みんないい」という詩が紹介されている。
私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面を速く走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように、
たくさんな唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。
偏狭なナショナリズムは他者との相違を理解しないところから発生しているが、それを克服して相互に理解・扶助を行い、全人類の共通の価値観を見いだすことによって、国家間の敵意を少なくすることができるが、国連はその理想を体現した機関であった。イスラエルは国連の司法機関である国際司法裁判所がイスラエルの占領を不当と判断してもそれをいっこうに聞き入れる様子がない。
イスラエルにも「みんなちがって、みんないい」と思っていた人は少なからず現れてきた。イスラエルの作家アモス・オズ(1939~2018年)は、パレスチナ問題の一国家による解決を一貫して否定し、宗教や民族性だけでなく、ヒューマンなユダヤ人の文化によって定義されるイスラエル国家の実現を望んだ。
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「狂信主義はイスラームより、キリスト教より、ユダヤ教より古い。どんな国や政府よりも古いし、どんな政治形態、どんなイデオロギーや信念よりも古くからこの世にあります。悲しいかな、狂信主義は人間の本性につねに備わっている成分、いわば悪い遺伝子なのです。」——アモス・オズ『わたしたちが正しい場所に花は咲かない』
今、イスラエルの政治・社会を覆っているのはこの悪い遺伝子なのだ。イスラエルはその社会の相違を認めずに、2018年にイスラエル国家はユダヤ人のみによって構成されるユダヤ国家法を成立させた。女優のナタリー・ポートマンは、アモス・オズが数え切れないほどの美、愛、また平和へのビジョンをもたらしてくれたと語り、その死が心の折れるほどの哀しみであるとオズの他界に際して述べた。ポートマンは、ユダヤ国家法が人種主義であり、誤りであると述べ、イスラエルが近隣諸国との関係が改善される努力の中にいたいと語った。彼女はイスラエルを愛すればこそ、暴力、腐敗、格差、権力の濫用に立ち上がられなければならないと語ったが、昨年10月7日以来のイスラエルはまさに真逆な様相を呈している。
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エビ・ナタン(1927~2008年)は、イスラエルの平和活動家で、ヨルダン川西岸におけるイスラエルの入植活動がイスラエルとパレスチナの共存を損なうものとして強く反対し、ハンガー・ストライキまで行った。彼はジョン・レノンの支援を得てラジオ局「平和の声」を立ち上げ、またジョン・レノンの経済支援によって「平和の船」を購入して平和活動を行った。
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イスラエルの「人権のためのラビ(ユダヤ教の宗教指導者)の代表であるラビ・アリク・アッシャーマン(1959年生まれ)は、ヨルダン川西岸のタイベ村郊外でオリーブの実を収穫するパレスチナ人農業従事者たちをイスラエルの極右入植者たちの襲撃から守っている。ハマスの攻撃があって以来、イスラエルの入植者たちは政府が支給する武器などでパレスチナ人コミュニティーを襲撃するようになった。同じ「人権のためのラビ」の所属するメンバーは「入植者たちが新たな戦線を開こうとしているとしか思えない」と語るほどだ。
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アッシャーマンは、ジョン・レノンの「想像してごらん 国なんて無いんだと そんなに難しくないでしょう?殺す理由も死ぬ理由も無くそして宗教も無い」という「イマジン」の一節をとらえて、「ジョン・レノンは正しかった」と語った。
米国はイスラエルの軍事ナショナリズムを煽るように、バイデン政権は昨年10月7日以来、180億ドル(2兆7000億円ほど)相当の武器を供与した。また8月には26年から29年にかけての230億ドルのイスラエルとの武器取引を発表し、これには50機のボーイングF-15戦闘機が含まれる。米国は、イスラエルが中東の他の国々に対して「質的軍事的優位性」(QME)を維持することを支援している。その目標のために、イスラエルは、この地域で唯一、最新のアメリカ戦闘機、F-35を保有し、運用できるようになっている。
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表紙の画像は 金子みすゞの言葉 : 新潟高・新潟南進学専門! 黎明館ブログin新潟西区 (livedoor.jp) より