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イスラエル・パレスチナの共存を訴えるナタリー・ポートマン
米国の女優ナタリー・ポートマンが初めて監督した作品「愛と暗黒の物語(A Tale of Love and Darkness)」(2016年)は、イスラエル国家が成立した1948年から49年にかけての第1次中東戦争前後のイスラエルの作家アモス・オズ(1939年生まれ)の自伝を原作にするものだ。アモス・オズは、イスラエルとパレスチナの2国家共存による和平の進展を訴えて続けているが、映画の監督をしたポートマンも同様のモチーフをもっているに違いない。
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米国の女優ナタリー・ポートマンが初めて監督した作品「愛と暗黒の物語(A Tale of Love and Darkness)」(2016年)は、イスラエル国家が成立した1948年から49年にかけての第1次中東戦争前後のイスラエルの作家アモス・オズ(1939年生まれ)の自伝を原作にするものだ。アモス・オズは、イスラエルとパレスチナの2国家共存による和平の進展を訴えて続けているが、映画の監督をしたポートマンも同様のモチーフをもっているに違いない。
オズは、原作の中でイスラエル、パレスチナともに、イギリスから抑圧や屈辱を受け、アラブの土地は植民地化され、支配され、パレスチナでイギリスの委任統治当局によって殺害されたユダヤ人たちもいることを描く。
オズは、共通の「抑圧者」という「親(=イギリス)」をもちながらも、イスラエルとパレスチナは信頼し合うことができず、イギリスに対してかつてもった不信や反発の目を相互にもち合うようになった。そうした両者の憎悪や敵対を乗り越え、共存していくことを彼は望んでいる。
ナタリー・ポートマンは2015年8月26日付の「インディペンデント」にホロコーストについて語った。ホロコーストについてそれを思い起こし、犠牲者に対する敬意を払うことは重要だが、「憎悪」はいつの時代にも存在し、ヘイトを受ける人々にも感情移入する必要があり、「我々は犠牲者だ」ということをパラノイア的に唱え続けるべきではないと語っている。
「反セム主義」のようなヘイト・クライムは、いつの時代、あらゆる人々にも存在することを知らなければならないとも述べたが、彼女にこのような想いをもたせたのは、2007年のルワンダ訪問だったという。そこで1994年に発生したルワンダ虐殺に関する博物館を見学すると、大虐殺(ジェノサイド)は自分が教育を受けている時期にも発生していたものの、学校では教えられることがなかったことを知ったという。
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ポートマンはイスラエルのネタニヤフ元首相の「人種主義的な発言」にもゾッとするとコメントしたことがあるが、ジェノサイド、あるいはホロコーストは、ユダヤ人にだけ起きたことではない。1996年にワシントンDCを訪ねた時に、イラン社会の研究者であるエリック・フーグランド氏は1993年にナショナル・モールのわきに開館したホロコースト博物館について触れながら、「ホロコーストはアメリカのインディアンにも対してもあったし、広島・長崎への原爆投下だってホロコーストだ」と語っていた。現在のイスラエルの右派政権にとって「ホロコースト」という言葉はあらゆる非人道的な行為の「免罪符」になっている感もある。
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ポートマンは、ナチス・ドイツによる大虐殺「ホロコースト」についてそれを思い起こし、犠牲者に対する敬意を払うことは重要だが、「憎悪」はいつの時代にも存在し、ヘイトを受ける人々にも感情移入する必要があり、「我々は犠牲者だ」という感情をパラノイア的に訴え続けるべきではないと語っている。
パレスチナ・ガザのアル・メザン人権センターのイッサム・ユーニス所長は、3月18日、2017年がガザにとって最悪の年だったと述べた。2014年にイスラエルの攻撃を受けて破壊された家屋のうちわずかに53%しか人が居住する状態にない。ガザの若年層の失業率は60%に達する。(「ミドルイースト・モニター」の記事、2018年3月20日)パレスチナ住民たちが被る人権侵害は、ホロコーストの大災難とは何の関係もないことはいうまでもない。
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