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【小説】第2の人生

 その日、世間に衝撃が走った。
 人気グループODN48の古参メンバーが卒業を発表したのだ。
 理由は、メンバーの次のキャリアへのステップアップのため、と説明された。

「私のことは嫌いでも、ODNのことは嫌いにならないでください!」その日の彼女の、最後のメッセージに、ファンだけでなく、メンバーも涙した。

 第2の人生に向け、誰もが温かく送りだしていた。

 しかし、それは表向きの理由であり、裏には生々しい事情が隠されていた。

「なんで私が卒業なんですか!?納得できません!」

 メンバーとスタッフが一堂に会するミーティングで、マネージャから卒業を打診されたこんにゃくは、机を勢いよく叩いて反論する。

「理解してくれ。最近の新メンバーの躍進ぶりは君にもわかるはずだ。ロールキャベツ、だしまきたまご、ソーセージ、みんな、若者から絶大な支持を集めている。それに比べて君は。私にこれ以上、言わせないでくれ」

 マネージャが沈痛な面持ちでそう返す。

「だからって、私が辞める必要ないじゃないですか、私たちの強味って、種類が豊富なところじゃないんですか?お客さんの好みに合わせて、幅広く対応できることじゃないですか!古い子も新しい子も、みんなで具だくさんなおでんつくれば、お客さんだって喜んでくれるはずです!」

 こんにゃくの演説に辛そうな表情を浮かべるメンバーたち。

「ステージには限界があるんだ。誰かが入れば、誰かが抜けるしかない」
「でも、より大きなキャパにすれば…」
「お前のためにか?」

 黙って話を聞いていた社長が口を開く。

「お前、今の立場に胡坐かているだろ?」
「社長、なにもそこまで」
「いや、この際だから、はっきり言わせてもらう。お前、おでんの古参メンバーだからって、偉そうにしてるよな?だが、はっきり言わせてもらえれば、お前は人気がない。だいこんやたまごの2トップは老若男女誰からも愛されてる。だが、お前はどうだ?お前のこと、誰が好きなんだ?」
「私にだってファンくらいいます!」
「それにな、お前としらたき、そっくりだよな?」
「それは、姉妹だから当然です」
「同じ要素は何人もいらない」
「それならしらたきが…」
「妹を売るのか、最低だな」
「それは…、でも、練り物姉妹たちだって…」
「あいつらはそれぞれに味も違えば見た目も違う。地域によっては、トップを脅かす人気だってある。お前に、あいつらの代わりはつとまるのか?」

 こんにゃくはとうとう言葉を失い、ただ立ち尽くすことしかできなくなっていた。

「今までお疲れさま、こんにゃく」

 マネージャが、こんにゃくの肩にそっと手を置く。

 あれから数日。
 再び、世間に衝撃が走った。

―こんにゃく、世界的グループPTF48に電撃加入!!!―

 その日、世界ではじめて、ポトフにこんにゃくが加わった。

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