【詩歌】キセイチュウ
盆・正月は帰省する
そんな習慣忘れて以来、何度目の夏がくるだろう
同窓会の誘いも
返事をしないでいるとやがて途絶えた
母から送られてきたメールに
返す言葉は少し遅れて
わかった、ありがとうと同じことばかり
機械のように繰り返すだけ
夜になったらカエルの歌が
聞こえてくるような田園だらけの
なにもないような町だったのに
どこにでもあるようなお店が
立ち並ぶような町になってる
どこにでもある町になってる
「変わっちまったなあ」
こことの距離は変わらないのに
どんどん遠くなっていくふるさと
都会に慣れたフリしてみても
馴らされ生きてるだけの寄生虫
ふと現実に気づいたら
逃げ出したくなる気持ち溢れて
逃げ続けてきた人生なのに
逃げる場所なく固まっている
助けてくれるの待ちになってた
誰かがくるの待ちに待ってた
「変わってないよなあ」
心の距離は変わらないのに
遠ざけてきたのは自分のほう
途端になぜかすべて許せて
電車に揺られる僕は帰省中