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カフェ・ハイチのドライカレーを食す
「これ、ドライカレーちゅうやろ!」
28年前、新宿 HAITI のドライカレーを初めて食べたとき、ドライカレーとはそれまでカレーチャーハンだとばかり思っていた新入社員のぼくはそう叫んでしまった。
水分が蒸発するまでしっかり炒め込まれたカレールウが、ご飯の上にかっちり塗り固められた一見色気のないドライカレー。
と思いきや、ドライパセリのグリーンが狂おしくも食欲を誘い、意外性をもって添えられた福神漬けが三丁目の夕日の匂いを醸し出す。
混ぜる労苦は要しない。プレートのどの場所をスプーンで探っても、ルウとライスの絶妙な配分が得られるよう計算されている。
不思議且つ複雑に絡み、'逢わされた' あまたのスパイスの香りを、鼻腔と舌と喉で確かめながらゆっくりと2、3度口に運ぶ。
しばし後、刺激的な辛さが口の中から食道に広がり、やがて額には心地好い汗がじわりとにじむ。
濃厚な深煎りハイチコーヒーにブランデーを2、3滴注ぎ、苦味と芳醇な匂いのマリアージュにまたしばし身を任せる。
目を閉じて、店内に流れるハイチ音楽に耳を傾ければ、眼前にはもうカリブの海が広がっている。
いろんなものやことの変化が益々加速するように見える昨今、変わらぬものはやっぱりいいと思う。歳を重ねた証左である。