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かくして物語の魔法は解かれた──『最高の離婚スペシャル2014』を見て
『最高の離婚スペシャル2014』を見た。
https://www.fujitv.co.jp/b_hp/140208premium/
「トイストーリー4」だった。
大衆性にはサヨナラ。お話は終わるので、作り手はテーマを大切にすることができた。
(「トイストーリー」は『5』もできるけど)
それは寿ぐべきなんだろうけど、どこか寂しさも残る。
真面目だな。
でも、‟楽しくなくっちゃテレビじゃない”のが大衆=オレなんだ。
『最高の離婚』とは?
2013年初頭にフジテレビ系列で放送された日本のテレビドラマ。
理屈っぽい男、濱崎光生(瑛太)とずぼらな女、結夏(尾野真千子)の離婚に、浮気性の美術教員上原諒(綾野剛)とその妻で光生の元カノ、灯里(真木よう子)の2組のカップルを中心に、夫婦のあり方について考える恋愛ドラマ。
※『最高の離婚スペシャル2014』と『トイストーリー4』のネタバレをします。
どこが似ていたか──大団円の魔法を解く戯作者のエゴイズム
『最高の離婚スペシャル2014』は・・・
シリーズ最終回にて婚姻届けを出さない、夫婦として過ごし始めた光生と結夏。しかし、1年後──子どもがいらない・苦手な光生と子どもが欲しい結夏との間で決定的な「幸せの形」の違いがあることから、2人は婚姻届けを出さず別々の道を歩むことを決める。
『トイストーリー4』
『トイストーリー3』にて、アンディ(主人公)のところからボニー・アンダーソンの元へ継承されたウッディ。おもちゃたちとボニーの元で暮らすこと、ボー・ピープと自由なおもちゃとして広い世界で暮らすことの選択を迫られたウッディは、保安官バッジを譲り、遊園地に留まることを決める。
全シリーズで大団円を迎えたようで、解決されていなかったテーマ。
それを拾い上げるのが意味のある続編であり、キャラクターに対して誠実な続編である。
その意味で、確かに作品に対してまっすぐ向き合ったアプローチだったのだ。
「光生が変わってしまったら光生ではない。でも、結夏は子どもが欲しいんだ」
「ウッディにはバズやポテトヘッドと人間の子どもに使える生涯を過ごしてほしい。でも、それではウッディに自由意志があるといえるのか?」
一人の人間あるいはおもちゃには個性や哲学、それに基づいた生き方があり、それを貫くことと物語上の大団円は時に衝突する。
それをうまくごまかす魔法が一流のエンタメ作家には使えるんだけど、魔法で箱庭にキャラクターを閉じ込めることに合えて反抗するという、魔法使いのエゴもあるのである。
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とはいえ、『最高の離婚』では最後の一夜における営みと光生の出す手紙、『トイストーリー』は『5』の存在で、再び魔法がかけられる予感が残される。
結局のところ、物語を通じて観客の感情をコントロールするというゲームは、この魔法をかけたり解いたり、あるいは中途半端に解除したりと自在に調節するテクニック勝負である、という側面が、ある。
冒頭のフレーズを引用すると、‟楽しくなくっちゃ”な産業や大衆の欲望が魔法を求め、”キャラクターの人権を大事にしたい”‟物語を作品として完成させたい”作者の矜持が魔法を解こうとする──その押引きによって批評家や感想家は一喜一憂させられてるんだね。