【読書記録】オン・ザ・ロード (河出文庫)
オン・ザ・ロード・アゲイン。バック・オン・ザ・ロード・アゲイン。ケルアックは名前だけ知っていて、ビートジェネレーションの作家(というか考案者)だということも知らなかった。とにかくのべつ幕なしにしゃべり、袖すりあうも他生の縁で旅に随行したかと思えば、突然「じゃあ」と別れてどこかへ行ってしまう。それでも主人公サル・パラダイスにとってディーン・モリアーティはいつでも帰ってくる(もしくは向かう)場所で、友情の物語であることは間違いない。しかし、後半になるにしたがってサルがディーンに切れる場面(キャデラックで飛ばし過ぎてスリップした件)も現れるなど、ディーンと一緒にいるのはやはり楽ではなく友情とは腐れ縁であり、腐った面も熟し過ぎたバナナのスィートスポットのようにずっとそこにある。真の友情とは、どこか腐った部分があるものなのだ。あとがきによると、ケルアックは本書を3週間で書いたとうそぶいて実は10年近く構想していたという。この本を書いた期間は「3週間」でなければならなかったのだ。「10年もかかって書いた本なんか、腐って読むに堪えないに決まってる!」とディーンは堪えず飛び出した、という情景が目に浮かぶ。でも、腐っているのも真実なのだ。