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日々のこと 0609

最近は仕事以外の文章を書いてなかった。
私は書くことによってしか物事を考えたり、頭の中が整理できないタイプなので、このところは何も整理してない。それも悪くはない。
でも、瞬間の感覚だけで過ごし続けているのは不安にもなるので、やっぱりたまには書かないとなーと思っている。

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『沈没家族』という映画を見に行った。
90年代後半、シングルマザーの穂子さんが「みんなで子育てしたら楽しいんじゃないか」と人を集め、「共同保育」という形で育てた加納土監督によるセルフ・ドキュメンタリー。

映画を見るとよく分かるのは、土くんが良い子に育ったということ。だから共同保育の試みは成功したんだと思う。子育てに正解はないというが、子どもは多様な価値観にまみれて育つ方が、きっと良いと思っている。

映画には「山くん」という実の父親が登場するのだが、この人の発言がイヤすぎて、ちゃぶ台をひっくり返したい衝動にかられた。もーイヤすぎて涙が出てしまった。
彼の心情は分からんでもないけど、訪ねてきた息子にそれを言うかしら。映画館にちゃぶ台がなくて良かったと思った。ただ、それは映画的にはものすごく大事なシーンで、あれがあるから面白くなったと思う。

映画館には、当時この共同保育に参加していた夫婦が子どもを連れて映画を見にきていた。
実は、それは私の古い友人でもある。待ち合わせたわけではなかったけれど、十数年ぶりに映画館で再会した。
この保育について、土くんがまだ小さかった時によく話を聞いていた。当時は「へー、そんなことしてるんだ。なんか楽しそうだね!」という感じだった。幼児と縁がなさそうな若い子たちが集まって、ワイワイ子どもの世話をする。私は昔からコミュニティ的なものがなんか苦手で参加したことはなかったけれど「土が、土が」という友人の話を聞いていた。彼らの試みが当時のテレビや雑誌に取り上げられたのも見ていた。
穂子さんには、その友人の結婚式で顔を合わせている。土くんと面識はない。でも、彼はいつのまにか大きくなって、映画をつくっていた。これは学校の卒業制作だという。

映画は監督の舞台挨拶つきだった。
上映後、友人夫婦と、土くんとお酒を飲んだ。
あれから時は流れ、私も、土くんたちも、それぞれに立場も状況も変わった。映画によって私たちは久しぶりに再会した。

「山くんがイヤすぎた!」と感想を話すと、みんな大笑いしていた。土くんだけ真面目な顔をして、撮影時の状況や心境を話してくれた。そのシーンを撮りながら、話している山くん自身も、カメラ片手に聞く土くんもパニックになったという。
「悪役を演じていたかもしれないよね」と友人が言った。そうかもしれない。そう、これは映画だった。
母親の穂子さんも、山くんも、編集は全面的に土くんに任せてくれたそうだ。写真家でもある山くんの撮った写真が映画にはたくさん出てくる。とても良い写真ばかり。彼もまた撮ること、撮られることを知っている人なのだった。

何度も言うが、土くんはとてもいい子に育ったと思う。そのことが一番うれしい。
私の身にもあれからさまざまなことがあり、いろんなことを重ねながら映画を見た。彼が映画をつくってくれたことに感謝している。

それぞれに次の用事を抱えていた私たちは「またいつかね」と、居酒屋を出て解散した。
その数時間後、駅のホームで土くんと再びバッタリ会った。
少し話をして、別れた。
土くんは、笑って手を振ってくれた。


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