カナメコーヒー〜はじまりは「死にたい」「甘えたい」から〜
#8
カナメ君、30歳。会ったばかりのころ、いろんな人に「死にたい」「甘えさせてほしい」と言っていたような気がする。「死にたい」と言われれば、「どうした?」と最初は答えていたけど、繰り返されると返す言葉もなくなって私や水野さんはメールスルー。
カナメ君は賢いから、私も水野さんも甘えさせてくれるような人間ではないと悟ったのでしょう。私たち以外の人に発信。そうすると、その人たちからまた、私のところに「カナメ君が心配」と返ってくる。
「カナメ君、どっちにしても、私のところに心配が集まってくる」と言ったら、「すみません、わかりました」って。そして、彼は悟った。Ponteとやまは、慰めてくれないし甘えさせてくれない。でも、何かしたいといえば、耳を傾けてくれるということを。
もともと理学療法士の資格持っているから、私に対するアドバイスが「加藤さん猫背ですね。気を付けないと腰が痛くなりますよ」とか、説得力ある。そして器用。手芸、パンづくり、ラーメン(材料費一杯2千円だって)いろいろやってみたけど残念ながらいまいち。
「確か、カナメ君は、いろいろ過敏だったね。目、耳、触感。私は飲めないんだけど、コーヒー研究してみたら?」
これがぴったりはまった。研究熱心だから道具から豆から勉強して焙煎も自分でやってみた。目でコーヒー豆の煎り具合、鼻でにおいを確認し、浅煎り、深入りをきわめていく。そして、自分で縫った布製のコーヒーフィルターを使ってひとつひとつ丁寧に淹れていく。
先日のこと、「私はコーヒー大好きだけど、富山ではおいしいコーヒーに出会ったことない」という方を誘ってみました。彼女も手仕事の職人さんだから評価は厳しいはず・・・しかし、彼女はカナメ君のコーヒーを一口含んで、「ああーおいしいなんてもんじゃない!」と最大級の誉め言葉をくれました。「コーヒーを淹れられる人は世界を歩ける!」とも言ってもらえた。
カナメ君、どこでも通用する技を手に入れたんだね。
それでも時々つぶれるカナメ君。今では静かにつぶれます。「しばらくお休みください」そして静かに復帰してきます。「来週から復帰します」
今年の冬は長かった。3か月ほど引きこもっているときに、コンソメ作ったそうです。ベーコンと野菜をいためて煮込んで数時間。粉末になるまで煮詰めていったらしい。気が付いたら日が暮れていたとのこと。この力の抜け方(入れ方?)に癒される人もいてファンが徐々に増えていっています。
今年は不労所得を稼ぐため、ドリップコーヒー作るそうです。引きこもっているときはこれを誰かに売ってもらえるように準備に入りました。頑張ってください。
by えりこ(カフェ店主)