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【連載企画】売却の行方 シーガイア外資へ

 コロナ禍を持ちこたえて施設利用者も戻り、13年ぶり黒字化を達成した昨年、「事業再生のフェーズが完了した」と内外にアピールしたフェニックスリゾート。親会社変更により、本県観光をけん引するリゾート施設は再び大きな転換点を迎える。


上.突然の発表

事業再生めど決め手/「提案受け議論尽くした」

 宮崎市の大型リゾート施設「シーガイア」を運営するフェニックスリゾート(同市)が12年ぶりに米国資本に委ねられるニュースが駆け巡った10日。
 「質問が出ると思うので先にお答えする。売却がなぜこのタイミングか」。親会社・セガサミーホールディングス(HD、東京)の2024年3月期連結決算会見で、里見治紀社長は質疑応答に入る前にそう切り出し「正直、(里見治)会長も私も売りたいとは思っていなかった」と続けた。
 売却先となった米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループからの提案を受け「取締役会で議論を尽くした結果」と経緯を簡潔に説明した。

フェニックスリゾートが運営するシーガイアコンベン
ションセンター(左)とシェラトン・グランデ・オー
シャンリゾート=宮崎市山崎町

 01年のフェニックスリゾートの経営破綻後、米投資会社リップルウッド(当時)による経営を挟み、セガサミーHDが再建に乗り出したのは12年。全株式を4億円で取得した一方、「これまで100億円以上投資してきた」(里見社長)。
 待遇面では給料一律10%カット、賞与なしの状態で引き継ぎ「業容を拡大し、利益を出せる体質になったら、社員に還元する約束をしていた」と振り返った。24年3月期で2期連続の黒字を達成したことから「今期はこれまで以上にしっかりボーナスを出すことにしていた」と明かすなど、事業再生にめどが付いたことを決断の理由に挙げた。
 さらには投資を重ねてきた施設が改修のフェーズを迎える中、ホテル・リゾート事業で豊富なノウハウを有するフォートレスからの「積極投資をしていく用意がある」「雇用をしっかり守る」というコミットメント(決意)も決め手になった。企業価値最大化のためにはフォートレス主導が最善と判断。主力のゲームやパチンコの事業に経営資源を集中させつつ、引き続きフェニックスリゾートを支援すると強調した。別の幹部は「地元に理解いただける関係をきちんと構築したい」と述べた。
 ただ、シーガイアと密に連携し、観光、スポーツなどの分野で数々の成果を挙げてきた官民の受け止めは複雑。急転直下だったこともあり「2期連続黒字と円安で、売り時としてはこれ以上ないタイミング」という見方も一部でくすぶる。

2024年5月12日

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