オフィス形式は働く人の就業不能による退職の発生と関連する
はじめに
新型コロナオフィスの感染状況が落ち着くに伴って、テレワークからオフィス勤務に回帰する企業が多くなっています。一定日数のテレワークを認める企業においても従業員のオフィス勤務を奨励し、従業員のオフィス出社を促進するためにオフィスのリニューアルを図る動きが出て来ています。そこで、今回はオフィス形式と従業員の健康状態の関連に関する研究を紹介したいと思います。
Nielsen MB, Emberland JS, Knardahl S. Office design as a risk factor for disability retirement: A prospective registry study of Norwegian employees. Scand J Work Environ Health. 2021 Jan 1;47(1):22-32. doi: 10.5271/sjweh.3907. Epub 2020 Jun 18. PMID: 32556338; PMCID: PMC7801143.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7801143/
ノルウェーで実施された追跡研究
この研究はNielsenらによってノルウェーで実施された研究で、オフィス形式によってそこで働く労働者の就業不能による退職の発生に差があるかを検討しています。ノルウェーで実施された別の大規模研究の一部として実施されており、ノルウェー国内の組織でフルタイム勤務で働く労働者を対象としています。
この研究では研究に参加した労働者から得たデータが勤務先のデータ、さらに日本のハローワークにあたるノルウェー労働福祉局の持つ労働者の就業状態のデータと結合されて分析されていることが特徴です。
オフィス形式については、労働者が働いているオフィスを(1)1人用の居室、(2)1人以上の同僚との共有する居室、(3)オープンプラン形式のオフィス、(4)店舗やサービスステーション、(5)治療施設、(6)屋外の選択肢で回答してもらい、(4)~(6)に回答した労働者は除外されています。
労働者のパーソナリティについてはビッグファイブ理論にもとづく調査票で評価されました。
今回分析対象となる就業不能による退職はノルウェー労働福祉局の持つ記録をもとに判定されています。ノルウェーでは就業不能による退職は、恒常的に最大50%までしか職務遂行能力がないと医師が証明した場合に認められます。今回の研究では診断情報は得られていないため、あらゆる原因による就業不能による退職が対象となっています。
分析結果と考察
Cox比例ハザード回帰分析という手法を用いて研究対象の労働者の就業不能による退職の発生と、労働者が働いているオフィス形式、性別、職務能力等の属性、パーソナリティ等との関連を検討しました。
その結果、性別、職務能力等の属性、パーソナリティ等を考慮しても、(1)1人用の居室で働く労働者に比べて、(2)1人以上の同僚と共有する居室、(3)オープンプラン形式のオフィスでは就業不能による退職が発生しやすかったことが分かりました。
論文の著者らは、オフィス形式と就業不能による退職の発生が関連していた理由として、1人以上の同僚と共有する居室やオープンプラン形式のオフィスにおける、騒音や他人の行動で気が散ることの影響、プライバシーが保たれないことの影響を指摘しています。
本研究のオープンプラン形式のオフィスと日本のオフィスで典型的な島型のオフィスとは完全に同じでないことや、日本では1人用の居室は珍しいため本研究の結果が日本の労働者に適用出来るかは要検討ですが、オフィス形式によって従業員の就業不能による退職の発生が異なるというのは大変興味深い結果です。
以 上
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