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パルスサーベイ開発の最重要ポイント

自己紹介

ベターオプションズ代表取締役の宮中大介と申します。メンタルヘルスや組織開発関連ビジネスの開発支援、人事・健康経営関連のデータ分析に従事しています。株式会社ベターオプションズ:

はじめに

弊社ではパルスサーベイ開発を検討している企業様、パルスサーベイを導入している人事部門様から「パルスサーベイがうまく機能しない」、「パルスサーベイが従業員から嫌われている」という悩みについて相談を受けます。そこで、今回は、そのような事態を避けるために、パルスサーベイ開発の際に留意すべき最重要ポイントを述べたいと思います。


まずパルスサーベイの目的を検討せよ

パルスサーベイを開発する上で留意すべき最重要ポイントは、「目的から検討する」ということです。つまり、パルスサーベイ開発においては、下記の順序を守ることが鉄則です。

パルスサーベイの目的の決定→項目の決定→実施頻度の決定

パルスサーベイでは、項目、実施頻度、フォローアップ方法等さまざまな論点を検討する必要がありますが、パルスサーベイの目的によって、どのような項目を含めるのかが決まり、どのような項目にするのかによって最適な実施頻度が変わってきます。パルスサーベイの目的が曖昧なまま開発を進めてしまうと、項目や実施頻度を何となく決定することになり、効果を発揮しないパルスサーベイが出来てしまうことになります。

逆に目的がしっかり検討されていれば目的達成を評価するKPIを設定することも出来、仮にパルスサーベイを導入して従業員から不満が上がった時に、「休職予防の目的のために実施しています。パルスサーベイの効果で休職率がここ3年で1%低下しています」という主張も出来ることになります。

パルスサーベイの目的を決めれば項目、実施頻度が決まる

一般にパルスサーベイの目的としては、休職(メンタルヘルス不調)予防、離職防止、パフォーマンス向上等が考えられます。たとえば、休職予防であれば、メンタルヘルス不調を事前に検知できるような項目構成とする必要があります。同様に離職防止を目的とするのであれば、離職と関連性の高い項目を中心に含めることになります。項目選定にあたっては、学術研究等を参考にしながら、パルスサーベイの目的に即した項目を選定します。これについてはサーベイ開発の専門家の力を借りることをお勧めします。

パルスサーベイの項目が決定すれば、その項目に適した実施頻度を設定します。この部分は特に専門的な知見が要求されます。学術研究結果を参考にしたり、実際にパルスサーベイを実施してみてその結果を分析して、最終的な実施頻度を決定します。

パルスサーベイ実施頻度をむやみに高くするのは意味がない

パルスサーベイの実施頻度を検討するにあたって注意すべきは、メンタルヘルスにしてもエンゲージメントにしても、大部分の従業員ではほとんど変化しないという事実です。

たとえば、産業医大の研究者による製造業におけるメンタルヘルス不調による休職から復職者を対象とした研究報告が参考になります。この研究では復職者のメンタルヘルスやプレゼンティーイズム(生産性)が1か月ごとに測定されており、研究の参加者一人一人の軌跡(Fig.1)が示されています。これを見ると、比較的メンタルヘルスの状態が不安定と思われる復職者においても、メンタルヘルスやプレゼンティーイズム(生産性)が大きく変化している人は稀であり、多くの人がなだらかな変化あるいは安定していることが分かります。

Kusumoto, A., Kajiki, S., Anan, T., Nagata, T., Nagata, M., Fujino, Y., & Mori, K. (2021). Changes in Presenteeism Six Months After Returning from Sick Leave Due to Mental Illness. Journal of UOEH, 43(4), 385–395. https://doi.org/10.7888/juoeh.43.385https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/43/4/43_385/_pdf/-char/en

従って、メンタルヘルスやエンゲージメントの変化を捉えるためにパルスサーベイの実施頻度を高くし過ぎても、大部分の従業員にとっては毎回同じ回答をし続けることになり負担感を感じやすくなります。

複数の目的に対応したパルスサーベイとすることはできるか?

ちなみに、複数の目的に対応したパルスサーベイと出来ないかという相談を受けることがありますが、お勧めしていません。パルスサーベイを複数の目的に対応させようとすると、項目数が多くなり回答者の負担につながり回答率の低下につながります。

どうしても複数の目的に対応したパルスサーベイとして設計したい場合、メインの目的とサブの目的を設定し、メインの目的に沿った項目構成としつつも、サブの目的に対応した項目を少数含めるという対応となります。たとえば、休職防止をメインとしつつも、離職防止をサブの目的として設定する場合は、2問はメンタルヘルス関連、1問エンゲージメント関連とするイメージです。


以 上

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