昔はヤンチャしてた
なぜ男という生き物は昔ヤンチャしてたことを誇らしげに語るのだろうか。
人様に迷惑をかけてきたことを心から恥じ、
猛省し、慎ましく生きていくべきだというのに、
自慢するだなんて!!!
……そもそも本当にヤンチャをしていたのか?
確かめようがないので言ったもん勝ちなのだ。
あまりにも卑怯すぎやしないか。
そもそも本当にヤンチャをしていた人間は
自慢などしないのではないか。
「おれ昔結構ヤンチャしてたんだよね〜」
「本当ですか?確認したいので高校時代の友人に電話してください」
プルルルル…プルルルル…
「はい、もしもし」
「突然すみません。今○○さんと飲んでまして、昔かなりヤンチャをされていたと伺ったのですが本当でしょうか?」
「本当だよ。あいつ相当ヤンチャしてたよ」
「分かりました。ありがとうございます」
プーッ…プーッ…
「確認取れました。ヤンチャしてたんですね」
「そうなんだよ」
くらいのやり取りがあれば信用できるのだが。
批判を覚悟してでもお伝えしなければならない。
女子にも多少の責任があるのではないか。
なぜなら可愛い子はみんなヤンキーと付き合うからだ。
なぜ可愛い子はヤンキーと付き合うんだ!!!!
男なら誰しも一度は経験があるだろう。
自分の好きな子がヤンキーと付き合うという人生最悪のイベント。
「○○さん○○先輩と付き合ってるらしいよ」
暴れる心臓。乱れる呼吸。
ガクガクの足を必死に抑えながら歩いた
夕焼けの路地裏。カレーの匂い。
焼き芋屋さん。カラスの鳴き声。
無理矢理に口角を上げて家のドアを開ける
「ただいま!」
上手に笑えているだろうか。
…あの若き日の壮絶なトラウマが
ヤンキー=モテるというチープな方程式を作り出し、ヤンチャ自慢モンスターを生むのである。
自分が通っていた高校の学科は
福岡県の中で最も偏差値が低い。(456位/456)
中学時代主要5教科でオール1を取り、
学年で最下位争いを繰り広げていた自分ですら
高校での成績は上位であった。
福岡の人間に出身の高校を伝えると
「え!?じゃあヤンキーだったんですか?」
とほぼほぼ聞かれてしまうような高校だ。
そんな時は決まって
「全然(笑)でもヤンキー高校だったから周りはかなり荒れてたね。自分は普通だったけど(笑)」
などとヘラヘラ答えている。
…ふと思った。
「自分はヤンチャじゃなかったけどヤンキー高校だったから周りは結構荒れていた自慢」をしているのではないか…?
『不良たちに囲まれていたぞ』と
『揉まれたぞ』と
『あの環境を生き抜いてきたぞ』と
『生ぬるい高校生活は送ってなかったぞ』と
遠回しにアピールしてしまっている!!!???
ヤンチャ自慢の男たちと
何ら変わりないじゃないか!!!!!
かと言って自分が表立ってヤンチャをする勇気は全くもってない。
他校の生徒とタイマンを張る勇気もなければ
盗んだバイクで走り出す勇気もサラサラないのだ。
要するに
『自分の手は汚さずに周りのヤンキーたちの恩恵を受けようとしている1番タチが悪いダサ男』である。
やだ恥ずかしい!!!!!!
まだヤンチャ自慢をしている奴の方がマシなんじゃないの!!??
気づいてしまった。
いや、本当はずっと気づいていた。
気づいてないふりをしていた。
自分はヤンキーに憧れているのだ。
反社会的で衝動的で
危険な香りがぷんぷんするヤンキーという存在に
憧れている。
来世では立派なヤンキーに生まれかわり
雨に凍える捨て猫を拾い上げ
「お前もひとりぼっちなのか……?」
などと呟いてみたいものである。