不健康への憧れ


重度の花粉症である。
毎年春になると鼻水の量産体制に入り
宮本のくしゃみと共に桜の花が咲き乱れる。


投薬治療にレーザー治療、
注射療法や舌下免疫療法など
花粉症治療もここ数年でかなり進化を遂げた。(らしい)

毎年つらい思いをしているのに
とくに治療をすることもなく
花粉症を受け入れてしまっている。

と言うより花粉症の自分を
ちょっとかっこいいと思っている。

必要以上に鼻をかみ、大げさにくしゃみをし

「やべぇww花粉キチィwww」
などと誇らしげに喚き散らしている。

なんだか「選ばれた」気がするのだ。
花粉症である自分が嬉しい。

治療はしない。
花粉症は宮本のアイデンティティなのだ。

自分は体調を崩すことがほとんどない。

健康すぎるが故、
昔から不健康への憧れがある。

骨折して松葉杖をつく友達に嫉妬し、
外反母趾の兄に憧れ
ガングリオンがある女の子に恋をした。


ごく稀に病気になったり怪我をした時は
ついつい心が弾んでしまう。


『主役に躍り出るチャンスが到来した』

組体操の練習で足を捻挫した時
車椅子で登校したいと直訴した。(却下された)

バイト先で火傷をした時は
大げさに包帯を巻いてもらい

37℃の熱で冷えピタを貼り
余命2時間みたいな顔してゼエゼエ言っている。


心配してほしいのだ。
もうホント頼むから
みんなもっとおれに注目してくれ。


ちなみに憧れてるからと言って
実際に怪我をしたいか、病気になりたいか
と言われたら話は別である。


なりたくないに決まっている。

骨が折れるなんて想像するだけで
あまりの恐怖に失禁しそうになる。
ましてや入院や手術なんてまっぴらごめんだ。
毎日お母さんに手を握ってもらわないと
気が狂って死んでしまう。

宮本は痛みに弱い。

突き指で早退し病院でレントゲンを撮り
念のために次の日は学校を休んだし

爪が剥がれかけた時は
あまりの痛さに死んだ方がマシだと泣き叫んだ。


痛みもなく、特に日常生活に支障もなく、
でもみんなから心配され、慰められる。

そんな都合のいい絶妙な病気や怪我が
どこかに落ちていたら宮本に教えてください。

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