『肩関節脱臼』10年間の治療経験〜手術前より強くする〜
肩関節脱臼(反復性肩関節脱臼)の自らの体験をまとめました。この記事は、当時の自分と同じ状況で悩んでいる人の治療の参考になれば幸いです。
1.受傷機転
初回の脱臼は2007年(17歳)
当時パワーリフティングをやっており、スクワットのバーベルを担いだ状態で後ろにバーを落としてしまい、肩ごと外転外旋方向に持っていかれ亜脱臼しました。数週間痛かったですが、翌日から普通に練習して競技を続けていました。
再脱臼は2010年(21歳)
総合格闘技の練習でタックルを切られた時(うつ伏せでバンザイした状態)です。
肩関節脱臼は初回の時点で、三角巾で固定(約3週間)していれば、関節周囲組織の修復が行われ、再発率を下げることができると言われています。何も知らなかった自分は固定などせず無理して翌日から動かしていました。その結果、脱臼癖がついてしまい、合計20回ぐらい脱臼を繰り返しました。
2.治療方針
手術の費用は約30万円、完治まで6ヶ月はかかると知り、そんなにお金も時間も費やせないと考えておりました。なんとしても保存で治したくて、良いと言われているリハビリは全てやりましたが、何をしても、どんなに工夫しても根治的な治療にはならないので無駄に終わりました。そして苦渋の選択で2011年に手術することにしました。
3.手術
まず当時の肩の状態ですが『関節唇』という肩の受け皿(関節窩)の輪郭を覆っている組織を損傷したことで脱臼する道ができてしまったという状態でした。
(プロテウス 解剖学 アトラス 第3版 P264 監訳 坂井建雄 2019より引用)
また脱臼を繰り返しすぎて、腱板損傷、上腕骨頭剥離骨折も判明し同時に手術することになりました。(この話は長くなるので省略します)
『関節唇を縫合した写真』
う〜ん・・・よくわかりませんね(笑)
『手術直後の写真』
『手術後に3週間装着した装具』
4.リハビリ
入院期間がかなり短くて2泊3日でした。その後、通院でリハビリに通うことになったのですが、そこから長い道のりの始まりでした。
リハビリの内容
①理学療法士のストレッチ20分
②自主トレ
理学療法士がついてのリハビリ時間は1人20分のみと決まっているので、自分でできない細かい筋肉のストレッチ、マッサージにその時間をフルに使っていただき、後は自主トレを(自分でできることは自分で)行うという方針でした。当時からリハビリは自分でやるもので、理学療法士はそのヒントをくださるものだという理解でやってました。
『肩関節の基本的なストレッチ』
これは一例です。伸ばせたらいいので別の方法でもOKです。
『基本的なインナーマッスルトレーニング』
肩のリハビリはインナーマッスルが大事とよく言われます。確かに肩を安定させる為にはインナーは必要ですが、それは最低限、鍛えて当たり前のところです。アスリートであれば、その先に競技に必要な動きを想定(再現)してアウターマッスルを鍛えていくことが大切だと思います。
特に実際に脱臼した場面を再現して鍛えていくことが大切だと実感しました。
『脱臼した場面を想定して』
この体勢は非常に怖いですが、恐怖感の克服、必要なタイミングで筋肉を働かせる練習をしていきます。
その他の筋トレに関しては主に(腕立て伏せや懸垂などの)自重トレーニングを中心に行っています。
『自重トレーニング(YouTubeにて)』
5.現在
完全に筋力が戻るまでに5年かかりました。
『手術後(3週間の固定後)と現在の比較』
可動域について
最終的な可動域は、右肩関節に比べて、手術した左は屈曲8割、伸展9割、外旋6割まで戻りました。特に外旋については手術で制動をかけているとのことで、こればかりはどうしようもありません。
『手術後は柔術を始めました』
怪我が理由でできない(捨てた)動きが多いですが、長所を伸ばして工夫しながら楽しくやってます。
6.最後に
結局リハビリは2年通いました(最初の1年は週1日、2年目は隔週で)。痛みについては、手術後1ヶ月間は痛くて夜に何度も目が覚めるぐらいでした。現在は痛くないです。あと、スポーツ保険は必ず入っておきましょう。自分は当時入っていなくて、かなり後悔しました。
そしてこの経験がきっかけで、現在は理学療法士として働いています。他にもたくさん怪我は経験してきましたし、これからも怪我すると思いますので、このように体験談をまとめることで同じ怪我で悩んでいる人の治療の参考になればと思います。