大手マンション管理会社をリプレイスしたらブランド価値が下がる?
大手マンション管理会社による管理委託費の大幅値上げとその影響
ここ数年、マンション管理業界では、特に大手や中堅の管理会社を中心に、マンション管理組合に対して管理委託費の大幅な値上げ要請が相次いでいます。大手管理会社は、管理組合が値上げに応じない場合、契約の更新を拒否するといった強硬な姿勢を見せることも珍しくありません。この現象は、フロント担当者や管理員、清掃員といった現場スタッフの人材不足や、インフレによる待遇改善の必要性が背景にあると言えますが、一部では便乗値上げと疑われるケースも見受けられます。
値上げの背景とその影響
管理会社が値上げを求める理由の一つとして、人手不足が挙げられます。フロント業務や管理業務に携わる人材の確保が難しくなり、そのためのコストが増加しているのは事実です。また、インフレの影響で、スタッフの給与や福利厚生の改善が求められており、それが管理委託費に転嫁されることも理解できます。しかし、問題はその値上げ幅です。一部の大手管理会社が提示する大幅な値上げは、現実的なコスト増を反映しているというよりも、業界全体の流れに便乗したものではないかとの疑念が拭えません。
私がマンション管理士事務所として経営する「メルすみごこち事務所」や、同じく共同経営している管理会社「クローバーコミュニティ」で受ける相談の中でも、現行の管理会社からの大幅な値上げ提案に対する危機感が強く感じられます。実際に、管理会社変更の見積依頼を受ける際、管理組合からの問い合わせの80%以上が、現在の管理会社による値上げ要請に関するものです。
管理会社の変更とマンションのブランド価値
マンション管理会社の変更に関して、多くの管理組合が懸念するのが「マンションのブランド価値」に対する影響です。特に、管理会社が財閥系(三井・三菱・住友・野村など)や鉄道系(東急など)、老舗系(大京や長谷工・大和ハウスなど)である場合、管理会社を変更することでマンションのブランド価値が下がり、ひいては不動産の価値が下がるのではないかという不安が一定数存在します。
しかし、結論から言えば、この懸念は過度なものです。マンションのブランド価値に影響を与える要因としては、分譲主や施工業者、つまりマンションが新築されたときの企業の影響が大きいです。しかし、その後の管理会社がどこであるかが不動産の価格に直接影響を与えることはほとんどありません。
中古マンション市場の現実
25年前、私が新卒で中古マンションの仲介業に従事していた頃の感覚と、現在の不動産仲介営業マンへのヒアリング結果を比較しても、この点に関しては全く変わりがありません。多くの購入者や投資家は、マンションの管理会社がどこであるかよりも、建物の状態や周辺環境、利便性などを重視しますし、管理費と修繕積立金の額(つまり物件を所有することで発生するランニングコスト)を重視します。
そのため、管理会社の変更が即座にマンションの価値に影響を与えることはないのです。
むしろ、現行の管理会社が過度な値上げを求めることで、管理組合が適切な対応を取らない場合、管理費や修繕積立金の負担増が居住者にとって大きな問題となり、その結果マンション全体の魅力が低下するリスクの方が高いと言えます。同じ地域に立地する同程度のマンションで、管理費等が月額2万円のところと4万円のところでは、同じように管理や修繕を行っているのであれば2万円のマンションを購入しますよね?
適切な管理会社を選定し、合理的な費用で質の高い管理サービスを受けることが、長期的にはマンションの価値を維持・向上させるための最善の方法です。
管理会社変更で大切なこと
マンション管理組合が大手管理会社からの大幅な管理委託費の値上げ要請に対して適切に対応し、必要に応じて管理会社の変更を検討することは、マンションのブランド価値や不動産価値を損なうことなく、居住者にとって最適な選択をするために重要です。管理会社の選定にあたっては、過去の実績やブランドにとらわれず、現実的な条件やサービス内容を総合的に評価することが重要であり、本質的です。
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