大規模マンションの総会:出席者の議決権を3倍に(3)
■前回コラムのあらすじ
アクシア八王子ピュアマークス管理組合法人の理事会(カイゼン委員会)は、過去の総会では出席者が減少し、審議事項は欠席者の票で可決される状況で活性化しない現状を改善するために「総会の場に出席する区分所有者には、当日欠席して書面で意思表示する方の『3倍』の議決権を与える」という提案を行います。これは、理事会が主体的に活動し、総会で真剣な議論が行われるようにするための仕組みです。この提案は、次の総会で多くの賛成を得て可決された、、、という話でした。
※前回コラム「大規模マンションの総会:出席者の議決権を3倍に(2)」はこちら
3倍の議決権を提供、1年後の総会でどうなった?
「総会当日に出席する区分所有者の議決権を3倍(3票)にする」という提案が総会で可決承認されてから1年。
つい先日、翌年の通常総会が行われ、次のような結果(傾向)が見られました。
総会当日の出席者は、前年の15名から40名へと増加した。また初めて総会に直接参加した区分所有者(特に30~40代)が増加した
前年以前の通常総会よりも理事会から提案した議案数が増え、内容もより充実したものとなった。
参加者からの意見、批判、逆提案、理事会へ感謝の声などが格段に増え、総会時間が3時間を超えた。
上程した総会議案のうちの一つ(共用施設の運用ルール見直し)は、可決されたものの、当日出席者の多くから質問や反対意見・逆提案があり、かつ採決に反対したため、理事会から「可決されたので実行はするが、実行後(来期以降)も引き続き検証を続け、必要に応じて再改定を提案する」と回答するに至った。
質問等に対する理事会役員・管理会社担当者からの回答がより的確になり、かつ議案説明や質疑回答の一次回答のほとんどが理事会役員から主体的に行われた(僕…マンション管理士…や管理会社フロント担当者は二次回答にまわった)
総会議案とは関係なかったが、前年の通常総会で可決された「当日出席者に議決権3倍」へ反対する複数の意見があった(その方々には総会後に残って頂き、僕と総会議長・管理会社フロント担当者を交えてさらに30分議論ができた。)
これらの結果(傾向)が「当日出席者へ議決権3倍提供」によるものかどうかは、母数が少ないので必ずしもYESと言い切れませんが、少なくとも執行部としての理事会+管理会社+マンション管理士の緊張感が増し、提案した議案や総会運営そのものレベルが格段に引き上がりました。
そして、前年以前よりも総会への当日出席者が増え、議案に対する反対意見も含め対話が促進されました。
総会出席者議決権3倍案で注意したこと
この提案を検討するに当たり、次の点に注意しています。
オンラインでの当日出席者にも3倍の議決権を提供
ZoomやGoogleMeet、Teamsなどを理事会が用意できる場合、マンションに居住しない区分所有者にも対応できるようなルールにしました。
3倍案は普通決議のみに適用
議案を可決するためのハードルが高い特別決議(管理規約の改定や共用部分の用途変更など)や建替決議のような、既に総会で可決するために3/4以上または4/5以上の賛成が必要な議案の場合、既に理事会が議案を通すためのハードルが高いため、理事会として議案を承認してもらうために一定の努力をしていると考えるのが普通と考え、3倍案の対象外としました。
また、まれに発生する「理事会以外の有志区分所有者が総会を提起する場合(いわゆる住民総会)」も3倍案の対象外としました。3倍案の目的のひとつが「理事会や管理会社・マンション管理士に緊張感をもたせ総会を活性化させる」ことであり、住民総会にはその必要がないと判断しました。
理事会役員は総会に出席しても議決権3倍の対象外に
この仕組みの趣旨からして当然ですね。
特定の区分所有者に多くの議決権を提供することの是非
総会参加者から「総会に出席するだけで3倍の議決権を与えるのは違法ではないか」という質問がありましたが、違法ではありません。議決権の割合は管理規約で設定することができます。
また「特定の区分所有者へ3票を提供するのは『民主主義の原則』から離れていて平等ではない」という質問もありましたが、これには次のように回答しています。
以上です。この仕組みの良し悪しの検証には時間がかかりますが、少なくとも現状を打開するための一歩を踏み出したことは間違いありません。
政治と同じで、現状が停滞しているなら「まず何かを変えて一歩踏み出そう」が大切です。ルールの弊害が出たら軌道修正すれば良いし、非を認めて一度作ったルールを廃止することも想定して、それでも一歩踏み出しましょう。(了)
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