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区分所有者の理事会への立候補を拒否するマンション管理会社(1)

マンションの理事会役員への立候補が管理会社に拒否されることについて、問題意識の高い区分所有者は疑問を感じると思います。
特に「マンションのルールブック」である管理規約に明記されていない理由で立候補が拒否される場合、その不透明さに不満が増大するのではないでしょうか。
このコラムでは、あるマンションで区分所有者が管理会社に理事会への立候補を拒否された具体的な事例を紹介しながら、どうしたら良いかについて2回に分けて話します。


具体的な事例(神奈川県のとあるマンション管理組合)

神奈川県川崎市にあるマンションの区分所有者であるAさんから「来期の理事会役員に立候補したいが管理会社に拒否された。どうすれば良いか」という相談が寄せられました。
Aさんは今回の相談より遡ること数年前に、管理会社(業界トップ10に入る大手管理会社)へ別件で問い合わせた際、フロント担当者から「理事会役員に立候補しませんか」と持ちかけられたことがありました。しかし今回立候補を試みたところ、管理会社や(管理会社から入れ知恵されたであろう)理事会から拒否されたのです。

私はAさんから過去の経緯や管理規約の規定を確認したうえで、理事長宛の文書案をAさんへ提供し、Aさんは理事長へ提出したうえで理事会の会合に参加しました。しかし、理事会から「既に理事会のなかで立候補を受け付けない方向でまとまっている。他にも立候補したい人がいた場合にAさんだけ立候補を受け入れることは公平ではないから」との理由で立候補を認めない、との回答で取り付く島もなく、最終的にAさんは立候補を断念せざるを得ませんでした。

理事会への立候補を申し出た文書

前段の「私が作成した、理事長あての文書案」はざっくり次の内容です。
※読みやすく修正しています。

このたび、私(Aさん)が理事会役員へ立候補しようとした際、管理会社のフロント担当者との相談の中でミスリードがあり、立候補が認められない旨の回答を受け取りました。以下に、私の立候補を理事会が受け入れる根拠を整理します。

①管理規約の解釈
管理規約において、役員を選出するためのルールは「居住する区分所有者(配偶者・親族)」以外、特にありません。役員の選出方法については「総会で選任する」とのみ記載されており、具体的な選任ルール(例:輪番制、立候補の受付不可)に関する記載は存在しません。

②役員候補の決定権と過去の判例
来期の役員候補を決定し総会へ提案するのは理事会ですが、この提案に際し特定の区分所有者を排除することは違法といえます。
過去の判例においても、理事会が立候補を拒否するには「立候補者が反社会勢力である」などの相当な理由が必要とされています。私は反社会的勢力でないため、私の立候補を拒否する正当な理由がないと言えます。

③過去における管理会社の矛盾した対応
私は過去に理事役員を務めましたが、当時はマンションに居住しておりませんでした。役員選任の資格がないにもかかわらず、当時の管理会社担当者と別件でコンタクトを取っていた際に、当該担当者から「マンションの理事会役員は輪番制なので理事会に出ませんか」と誘われました。
当時の話も管理規約に沿っていませんし、今回の立候補拒否もルールに沿っていません。
管理会社は、毎回何かの局面で管理会社側に不都合が生じると、私たち区分所有者に専門性がないことを良いことに理事会をコントロールしようとする意図を感じます。今回の立候補拒否も、管理会社による誘導の可能性が高く、私を排除しようとする意図が疑われます。
(以下略)

理事会への立候補拒否の問題点

上述の文書案を参考に、区分所有者であるAさんが管理会社を通じて理事会への立候補を拒否されることが不当であると考えられる理由を、5つの観点から論じます。

1. 管理規約に基づく立候補のルール

こちらのマンションの管理規約には、理事会役員の選任条件として「居住する区分所有者(配偶者・親族)」のみが記載されており、それ以外の具体的な選任ルール、例えば「輪番制に基づく」や「立候補は受け付けない」といった記載はありません。
したがって、居住している区分所有者であるAさんが立候補する権利を持っているのは明らかです。

2. 総会での役員候補の決定

次に、理事会が総会へ提出する議案として、次の1年の理事会役員候補を決定する役割を担っている点について考えます。一般的な管理規約に基づくと、理事会は来期の理事会役員候補を総会に提案する役割を持っていますが、その候補者を独断で排除する権限はありません。
この点において、Aさんのような立候補者を理事会が排除するのは規約に反する行為です。

3. 判例から見る立候補者拒否の正当性

過去の判例に基づいても、理事会が立候補を拒否するには正当な理由が必要です。あるマンションでの事例では、理事会が「正当な理由なく理事の立候補を拒否した」として立候補した区分所有者から訴えられたケースがありました。この判例では、理事会は「立候補者が反社会勢力である」などの特定の理由がない限り、立候補を拒否することはできないとされました。
Aさんが反社会勢力でない以上、理事会が立候補を拒否する理由はありません。(温和な方でしたが実は反社会勢力だったらごめんなさい)

4. 管理会社の矛盾した対応と理事会への誘導

過去に管理会社がAさんに提案した「マンションに居住していない区分所有者へ立候補を促した」ことは実際のルールと矛盾していることは問題です。そして今回のように、管理会社がAさんが理事会役員に選任されないよう、現理事会へ意図的に誤った情報を提供している可能性があります。管理会社によるこのような誘導は、区分所有者の権利を侵害する行為とも言えます。

管理会社の対応の悪さや管理委託料の高さ等に課題意識を持ったAさんは、管理会社にとって「都合の悪い区分所有者」であり、Aさんを排除するために、意図的にミスリードしている可能性が高いといえます。
これは、理事会役員の公正な選任プロセスを妨げ、区分所有者の権利を侵害する行為といえます。


Aさんの場合、Aさんが理事長宛に文書を出す前から、管理会社のフロント担当者が理事会役員へ入れ知恵した可能性が非常に高く、理事会からの回答は「既に理事会で立候補を受け付けない方向でまとまっている。他にも立候補したい人がいた場合にあなただけ立候補を受け入れることは公平ではないから」と立候補を認めないものでした。

僕を理事会の場に呼んでくれたら、上述の説明をしつつ、管理会社の担当者を一喝して強引にでも立候補を認めさせるのですが(笑)、Aさんに「エキセントリックな区分所有者」とのレッテルを貼られてマンションで変な噂をばら撒かれたりして住みづらくなる可能性も考え、僕から無理に押し通すことはお勧めしませんでした。

ただ「理事会役員への立候補が拒否された場合」に、立候補ではない方法で選出される方法が無いわけではありません。

今回はここまで。次回コラムでは、それでも理事会への立候補を拒絶された場合の対処法(ウルトラC?)を書いてみます。

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