[管理会社]都心から日常清掃員が消えた(1)
僕はマンション管理士事務所(メルすみごこち事務所)とは別に、マンション管理会社(クローバーコミュニティ)も経営しています。お陰様で他の管理会社からのリプレイスで、東京・神奈川を中心に受託が増え、創業会社であるクローバー管理(福岡)とグループで「200管理組合・1万戸」の受託が近づいています。
さて、管理会社経営の目線で最近の悩みを。マンション管理業界で大きな悩みになっていることのひとつに「シニア世代が担っている日常清掃員のなり手不足問題」があります。
その背景は次の通りです。
1.企業における定年年齢の引き上げ
安倍政権時に「少子超高齢化」「人生100年時代」「老後に2,000万円が必要」と言ったキーワードが飛び交ううちに、企業における定年年齢が60歳から65歳、70歳と引き上げられ、さらに生涯現役OK、みたいな企業も増えた結果、これまでマンション清掃員の有力候補であった60~65歳のシニア人材が勤務先の企業に留まり続け、日常清掃員の市場から一気にいなくなってしまいました。
1年前に品川区のハローワークに勤めているお客様から聞いたのは、
・品川区のハローワークに登録しているシニアは約2,400人
・うち、60代は4人、残りは全員70~80代
と、なかなか衝撃的なものでした。
2.収入が少ない短時間勤務の不人気
特に小規模マンションを中心に「週1~4回、一日あたり1~4時間」程度と短時間勤務の日常清掃について、清掃員のなり手がいません。まとまった給与が受け取れないためです。
週30~40時間勤務の「日常清掃を兼務する管理員」のなり手は、実は50代あたりから比較的多いです。
3.勤務は「平日午前」が必須で人材の奪い合い
多くの分譲マンションでは、居住者が出すゴミは、居住者が公道上へ直接持ち出すのではなく、敷地内(建物内)のゴミ置場(ゴミ保管庫)へ出して(保管して)、朝にゴミ収集車が回収へ来る前に日常清掃員がゴミを公道へ持ち出す仕組みを取っています。
「ゴミはいつでも敷地内(建物内)に捨てることができる」という分譲マンション生活における利便のために、管理会社は日常清掃員を「ゴミ収集車がやってくる日の午前」に派遣しなければならず、必要な人材が平日午前に集中してしまうため、ただでさえ少ない清掃員の取り合い状態になってしまいます。
以上、これらの要因で、「シニア+短時間勤務の日常清掃員」の確保が困難になっています。
特に、東京23区の千代田、中央、港、品川、文京、目黒、渋谷、新宿(つまり山手線の内側・外周部)の区では清掃員不足が深刻で、最近はもうちょっと広がって23区全体や川崎市・横浜市の中心部でも清掃員のなり手不足は深刻です。
これは、これら都心部においては、そもそもその地域で働く人の絶対数が少ないことに起因すると推察しています。港区のマンションに、遠方からわざわざ1時間以上かけて3~4時間勤務のために来てくださる方には感謝で頭が上がりません。
そして日常清掃員のなり手不足問題は、マンション管理士(メルすみごこち事務所)で自主管理マンションのプロ理事長業務を受託した場合にもつきまとう問題であり、いずれにしても頭の痛い問題です。
次のコラムでは、この問題に対する現状における対応と課題について書いてみます。
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