9月8日の夢②

積乱雲がやけに印象的だった

薄紫色の空にオレンジともピンクともみえる雲が流れて吸い込まれて膨らんで、まるで生き物みたいに私の頭上を昇っていった

Tの生まれ育った田舎をTの母親が運転するオープンカーで走っている
明け方にも夕暮れにもみえる空は車を360度つつんで生ぬるい風を吹きかけてくる
Tの親戚の女の子が亡くなったらしい
詳しいことはわからないけどとても大切に育てられた子らしくて、まるで泣き女が町中にいるみたいに、どこを走っても泣き声が聞こえる

「あれなに」

大きめの池?に人だかりができていたので指さす。

「あれは死者を弔うためにやっているんだ。昔からここでは死人が出るとあの池で釣った魚を生で食べて弔うんだよ」

ああして魚と一緒に空に送り出してあげるんだ
Tは地元なのに他人事みたいに言った。
Tはやらなくていいの、って聞こうと思ってやめた

車の中から覗いてもわかるくらい、人だかりの中でも特に目立つ人がいた
大泣きしながら狂ったように魚をどんどん口に入れてよだれと魚の体液をまき散らしていた
あれじゃあ弔っているというより、呪いの儀式で魂をここにとどめようと必死なようにもみえてしまう

きっと恋人とか大切な人だったんだね、でもあんな風に送り出されてうれしいのかなぁ

私の独り言にTは何も言わず、握っていた手のひらをさらにぎゅっとだけした
積乱雲はどんどん大きくなっていつの間にか空の色も吸収しているようだった
グラデーションがかった雲の隙間からたまに魚とか亡くなった女の子が見えた気がした

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◆前日の出来事
国立科学博物館にいった帰りに焼肉を食べました



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