「ポプラの秋」から考える 喪失 の扱いかた。
※ ネタバレ全開です。 ※(…心の声)がはいってますので。
映画の舞台は、美しい飛騨高山。
団子屋や土産屋などが立ち並ぶ、歴史的景観に、君の名は。がよぎった。
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父を亡くしたばかりの千秋ちゃん(本田望結さん)が、お母さん(大塚寧々さん)と一緒に、ポプラ荘に引っ越してきた。初めは、子ども嫌いのおばあさん(中村玉緒さん)との間に、壁を作っていた千秋ちゃんだが、徐々に、おばあさんの前では子どもらしくいられるようになる。
ある日、千秋ちゃんは、おばあさんに「自分は、あの世に手紙を届けることができる。お父さんに伝えたいことがあったら、手紙にして持ってきな。」という秘密を告げられる。それから、彼女は、書ききれないと言わんばかりに、ぴんと尖らせた鉛筆で、一日の出来事を丁寧に綴っていく。その姿は、父との思い出を、忘れないように、必死に胸に刻んでいるように見えた。(…9歳で思い出や気持ちを言葉にできるの、すごいよ・・涙)
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ポプラ荘に来た当初の千秋ちゃんは、お母さんが本当に大好きなんだね、自分の気持ちを抑圧してでも笑顔を見せて。でもやっぱり無理してるから、強迫性のようになって、終には身体を壊してしまう。お母さんに心配かけたくない、大切な人に見捨てられるのが怖いから顔色を伺っちゃうのは、分かる。大好きなのは分かるけど、無理しないで!って思う。それでもやっぱり大人を信じる子どもの純粋なこころに序盤から涙が止まらない。
そして同時に、私は、自分を偽らざるを得ない子どもたちの味方でありたい、そばに立つ人間でありたいと強く思った。
(…自分への戒め:何か一つのことが決まると安心しちゃいがちだけど、そうじゃなくて、なんでその決断をしようと思ったのか、定期的に思い出さないとやっぱり不安にもなるし、モチベーションも上がらないねえ。)
千秋ちゃんの瞳が凍り付くのを見る度に、お母さん、千秋ちゃんの瞳を見て、もっとお話をしてあげて!って初めは思っていた。でも、やっぱりお母さんも目の前の生活を成り立たせることに精いっぱいだし、夫との思い出に想いを馳せる余裕がないのも分かる。それに、大切な人を亡くしてすぐに引っ越して新しい職で毎日働いているだけでももう充分すぎだよ。誰もが自分のことに精いっぱいで、何かしらの問題を抱えてる。そんな時に、おばあさんのように、そばにいるだけで心が満たされて元気になれる人に出会える人はどのくらいいるんだろう。
「千秋は、人の気持ちに敏感で、共感せざるを得ない子。良いことも悪い気持ちも感じ取りすぎてしまってとても疲れてしまうから、孤独を好む。でも、やっぱり人助けをせざるを得ない。亡くなったお父さんにそっくりだから心配。」(…号泣!!!)
お母さんが、お父さんに宛てて書いた手紙に綴られていた。私も、最近母に言われた言葉が頭をよぎった。「人の言ったこと全然聞いてないんだから。(ぷんぷん)」とか「やっぱりあなたは研究者だとおもうよ。」とか「本当、お父さんにそっくり。」。私はいつも、彼女の言葉が腑に落ちなくて「そうかなあ?」と、とぼけてばかりいるけれど、多分そうなんだと思う。きっと私が気が付いてない私のことも分かってるんだ、と思う。お見通し。
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共感ポイントいっこめ。千秋ちゃんが書いたお父さん宛ての手紙。今年になってやっと私も父に手紙を書こうと思えるようになった。恥ずかしいから読み返すことはしないけど、何か大切な報告をした気がする。多分、成長した自分をほめてもらいたくて、凄いことをした時にしか手紙を書かないようになっていたから、些細なことでも千秋ちゃんみたいに、また書いてみようかなって思った。案外、言葉にできないものなのだね。
にこめ。ポプラの木。葉っぱのフレディを思いだすと同時に、生涯で役目を果たすとはどういうことなのか、考えさせられた。子どもの頃の千秋ちゃんの顔にひらひらと軽やかに落ちてきたポプラの葉は、千秋ちゃんをからかって、どこか一緒に遊んでいるみたいで、でも、大人になった千秋ちゃんの顔に触れた落ち葉は、おばあさんとの思い出が全部つまっているみたいでちょっと重たそうに感じた。最後には、何でお母さんがポプラ荘を選んだのか、すこし分かった気がした。
この前、母と話したこと。話していいのかな(笑)。父の両親に初めて挨拶に行く飛行機の中が人生で一番わくわくしたんだって。私はまだ、あの時、あの決断をしていたら、私の人生はどうなっていたんだろうって思うくらい大きな決断をしたことがないからその気持ちは分からないけれど、これから、どんどんそういう決断をしていくんだと思う。将来のことは不安だけれど、早く後ろを振り返って犬を膝に抱いてほうじ茶を飲みながら、しみじみとしてみたい気持ちもある(笑)。それはお楽しみということで、まずは、劣等感もまるごと「今の自分が一番好き!」って言えるように生きるのが目の前の目標。