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夕暮れ時の教室にての解説
cocommuさんで出したこちらの台本(【実験台本】夕暮れ時の教室にて)の課題文の解説をさせていただきます。
登場人物は「私」「君」「あの子」です。
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本当なんて知らなくてよかった
なにも聞こえず 見えないままで
秋にあの子を閉じ込めて
私に君を閉じ込めたい
「本当なんて知らなくてよかった」という私の叫びからはじまります。秋=飽き、つまりあの子の恋を飽きさせたいという私。私に君を閉じ込めたい、は君が私を想ってほしい、私と付き合ってほしい、という意味。
それはヒトメボレという事件で
私はトンボのように君の指に止まる
そうそのまま笑っててよ
ある日君が私の学校に転校してきます。それは事件と呼べるほど、私は恋に落ちてしまった。私は君に話しかけます。まるでトンボが指に止まるように。
でも君はあの子にご執心の様子
君プラスあの子で恋ならば
私が引かれて愛になる
しかし、君は幼なじみであるという(昔はこの土地にいたんですね)クラスの違うあの子をずっとずっと想い続けているみたい。あの子と君は両想いらしく(だから私はあの子がこの恋に飽きれば君が振り向いてくれると思った)、きっと私がいてもその恋は愛に変わるだけ(引き立て役になるだけ)と謙遜します(ところで謙遜って三国志に出てきそうですね)。
もう本当なんていらないから
黙ってこっち向いて
嘘でもいいから口づけて
でもそんなことさえ言えないの
乙女症候群にふたをして
口先にバツマーク
「恋なんて興味ない」とね
本当(=あの子と君が両想いであること)なんていらない。どうしても君を手に入れたいという私。しかし私は、サバサバしているのか、恋に興味がないようなキャラを作ってしまったのか、好きだという自分(=乙女症候群)を隠し(=口先にバツマーク)、「恋なんて興味ない」と口走ってしまいます。
それはトツゼンというハプニング
私の眼の奥は揺れ動いて
あの子は笑ったまま
迷っていると、ハプニング(=あの子と君が付き合うこと)が起きてしまい、私の心は揺れます。あの子は嬉しかったのか、笑っているようです。
時間に比例して恋は増す
君かけるあの子で無限なら
私が引かれても計測不可能
比例のグラフを覚えていますか? 時間が経つたび二人はますます好きな気持ちを深めていきます(それと同じく、私が君を想う気持ちも)。君とあの子が好き同士でいるときそれが無限(どうしても入る余地がないなら)、私がいて二人の好きの気持ちを削ること(告白し君を略奪すること)はできない様子。
もう君なんていらないから(笑)
そんなでまかせを吐(つ)いても
やっぱり辛くてカッコ消して
でももしかしたらなんて思うんだ
あの子の浮気性がヒット
君が涙して私がそばに
「そんな偶然あるわけない」って
もう君なんていらないから、と自嘲気味に笑う私。でもその言葉はやっぱり嘘で、(笑)なんて言えなくなる。でももしかしたら、あの子が浮気性で君がフラれ傷ついているところにそっと寄り添って……そんな未来あるわけない、私は落ち込みます。
夕暮れ時の教室で
私と君が二人きりで
あと10センチ あと1センチ
こんなに近いのに
心が遠くて秋の空
これがセリフのシーン。あと10センチ、あと1センチと先生に頼まれたものを渡す場面。秋の空って遠いですよね(秋の空が遠い→飽きが遠い→この恋を諦めきれない、と想像してもいいですね)。
もう本当なんていらないから
既成事実作っちゃえば
君の心奪えるかな
でもそんなことさえできなくて
乙女症候群を殺して
涙も心も壊して
「また明日ね」なんて言うの
無理やりにでも君とつながったら(例えばキスなんかしちゃったり?)、君がこっちを向いてくれるかな、と一瞬考える私。でもやっぱりできなくて、好きな気持ち(=乙女症候群、涙、心)をいったん捨て、笑顔で(涙も壊しているのでおそらく笑顔なんでしょう)「また明日」と。
本当なんて知らなくてよかった
夢見たままで ロマンチスト
冬に近づく今日この頃
寂しさは募って リアリスト
秋にあの子を閉じ込めたい
私は君になんて言われたい?
私と君がくっつく、そんな夢を見たまま過ごせたらよかった。なのに冬は近づいて(冬になるとやたら恋人とのイベントごと増える気がします)、すきなひとが隣にいない寂しさが募ります。
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最後の二文はみなさんの想像で。前からやってみたかった実験なので、楽しみですね。
【少し余談】「もう君なんていらないから(笑)」という文がありますが、私の経験談です。なんか(笑)ってつければなんでもごまかせるかなぁ、って思った若かりし頃の自分は、やたらつけていたような気がします。
「きみのことが好きだけど」
「きみのことが好きだけど(笑)」
二つの文見比べても、ほら、なんか柔らかくなった気がしません? 本気度が減ったような感じしません? でも一周回って、ツンデレな感じで好き好き度が増してますかね……。とにかく、好きな子のメールでは(笑)をつけてごまかしていました。昔の話やで……。
イラストはmomochy(@momochy_)さんのフリーアイコンお借りしました。物憂げなセーラー服を着た女の子がいいなぁと思ったので。かわいいイラスト、素敵です…。
このお話が思いついたきっかけなんかを話すと、YouTubeで三月のパンタシアさんの『青春なんていらないわ』にインスパイアされてしまったからです。たまたま見かけただけなのでほかの曲は聞いたことがないのですが、歌詞が素敵で。
君の横顔を追った 一瞬、もう一瞬
このフレーズを聞いて、「私」のイメージが固まりました。「君」と廊下ですれ違って、「私」がすれ違う瞬間に「君」を見つめる(一瞬)。通り過ぎてしまう。でもこらえきれずもう一度「私」が「君」の後ろ姿を見つめる(もう一瞬)、というシーンを思い浮かんで、書こう!と決めました(曲自体の意味や考察などを見ていないので個人的な解釈ですが)。課題文を最初に書いてー、でもそれを声にしてもらうのは長すぎるからー、セリフ考えてーと。
インスパイアされて書くことが多いので、今度はこれまでに書いた文章を解説で来たらいいですね。需要はないかもしれませんが、個人的にそれを見るのが好きであるのと、書いて自分もそうだったのか!と納得する部分があるからです。
そんなこんなで、台本、よろしくお願いします。