一月の川一月の谷の中 2025/1/11

一月の川一月の谷の中   飯田龍太

『春の道』

 この句は龍太の第五句集『春の道』に収録されたものであり、有名な名句である。単純ながら奥行きがある。
 季語は、一月の川。谷は川に大地が削られて形成される。そのこと(特に削ること)を思ったときに、必然的に一月の寒さが調和してくるのだろう。六月や八月の川ではこの句は成立しない。
 また、この句を正確に言うならば〈一月の川一月の谷の底〉であろうか。川が谷の中だというのやや漠然としている。しかし、同時にこれは即物的である。作者は谷の中を見ているのだから、川がその中にあり、その他のものもある。そして全てが一月の様相である。これがこの句の良さだと思う。

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