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2025年宮古島市長選挙総括レポート
はじめに
2025年の宮古島市長選挙は、嘉数登さんが9345票を獲得し、2位以下に2000票以上の差をつけて初当選を果たしました。前職の座喜味一幸さんは7100票、前里こうけんさんが6128票、下地明和さんが3213票、豊見山徹さんが162票、高橋敏夫さんは148票という結果となり、6名の争いに決着がついた形です。
「なぜこのような票差がついたのか?」「各候補はどんな背景・政策を掲げていたのか?」「今後、宮古島市はどう変わっていくのか?」といった視点から、選挙戦全体を振り返ります。
1. 開票結果の総括
嘉数登さん(9345票)
副市長として1年半宮古島市政を支えた実績や、沖縄県庁で培った行政経験を強みにした政策をもとに、幅広い層の支持を獲得した。
市議会議員や経済界など地元組織の後押しもあり、選挙後半で勢いを加速させた。
座喜味一幸さん(7100票)
現職として再選を目指すも、在任中の実績評価が伸び悩んだ。
防衛問題での曖昧な対応なども批判され、得票差を詰めきれず。
前里こうけんさん(6128票)
若手市議会議員として注目され、「SNSやデジタルを活用した市民参加型の政治」を強く訴求。
若年層に支持を集めたが、大きな組織力に欠け、高齢層や保守系への浸透が及ばなかった。
下地明和さん(3213票)
市長選のために宮古島へ戻ってきたこともあり、知名度・地盤の不足が否めず。
企業誘致や減税策など大胆な公約は注目されたが、短期間では課題を十分把握できず、票を伸ばせなかった。
2. 各候補の特徴と結果の要因
2-1. 嘉数登さん
経歴・背景
沖縄県庁で34年間勤務し、児童福祉や中小企業振興など幅広い行政分野を経験。
1年半前に副市長就任のため帰郷し、市政運営を実務レベルで支えてきた。
勝因のポイント
行政経験の豊富さ
離島振興や中小企業支援など多彩な政策分野に通じ、「即戦力」として安心感を与えた。
地元組織の強力な後押し
経済・建設業界、複数の市議会議員の支援が固く、選挙終盤で票固めを加速。
現職市政への批判票を吸収
在任中の混乱や曖昧な防衛姿勢に対する不満を取り込む形で、広い支持を集めた。
2-2. 座喜味一幸さん
経歴・背景
前職市長としての実績を訴えたが、4年間の市政で思うような成果を示せなかったという印象を持たれた。
惜敗の要因
実績アピールが不発
離島医療や住宅高騰など、喫緊の課題への対応が「十分ではない」と見られた。
防衛問題での曖昧さ
具体的姿勢を示さなかったため、有権者の不安を拭えず。
新鮮味の不足
現職ゆえの安定感は評価されたが、改革を期待する層には響かなかった。
2-3. 前里こうけんさん
経歴・背景
若手市議で、SNSを使った情報発信や子育て支援策などを積極的に展開。
健闘しつつも届かなかった理由
組織力の差
保守系有力者や経済界に深く食い込めず、後援会を広げる時間が不足。
即戦力への不安
大規模事業の調整や国・県とのパイプなどで、経験豊富な嘉数さんと比較され劣勢に。
若年層票の伸び悩み
SNS戦略は一定の効果があったが、高齢層や伝統保守層への浸透には至らず。
2-4. 下地明和さん
経歴・背景
商工労働部門の実績をアピールしつつ、市長選出馬のために戻ってきたという印象が強かった。
大差での敗北要因
知名度不足
地元活動の時間が短く、住民との直接的なつながりを築けず。
宮古島の課題把握の遅れ
大胆な産業振興策は魅力的だったが、離島の医療・福祉・インフラ問題への具体策が見えにくかった。
他保守候補との食い合い
同じ保守陣営の嘉数氏と比較され、「総合力で上回る嘉数氏を推す」という流れが強まった。
3. 選挙で浮き彫りになった争点・課題
住宅高騰と観光の両立
観光客の増加に伴う家賃高騰、インフラ負担、環境問題(ゴミ・水不足)が深刻化。
今後は「観光収益の地元還元」と「住民生活の安心」のバランスが大きなテーマに。
離島医療・福祉の充実
医師不足や高齢化など、離島が抱える特有の課題が山積。
国・県の支援や補助金を活用しながら、医療体制や介護サービスの強化が急務。
防衛問題への態度
台湾海峡や尖閣など地政学リスクが高まる中、市長として「安全保障と住民生活」をどう調和させるかが注目。
日米合同訓練への対応が具体的に示されるかが焦点。
市政の透明性・公平性
選挙期間中の怪文書騒動や不透明な事業選定への批判を踏まえ、公募・入札・議会運営の透明化が一層求められる。
行政改革(財政ビジョンや公共施設統廃合)の実行力も、今後の評価ポイントに。
4. 今後の宮古島市政に期待すること
嘉数市長の手腕と組織マネジメント
多岐にわたる政策課題を迅速に動かすには、市議会との良好な連携と市役所内部の活性化が欠かせない。
就任初期にどれだけ具体的な政策方針やロードマップを示せるかが鍵となる。
市民との対話と情報発信
若い世代から高齢者まで、多様な声を汲み上げる仕組み(タウンミーティングやSNS活用)に期待。
経済界や自治会との対話を積極的に行い、「離島のリアルな課題」を共有しながら対策を進められるかに注目。
保守・革新の壁を超えた協働
宮古島は保守が強い一方で、革新系の前市長を支持する層も一定数存在。
防衛問題や難しい政策課題に挑む際、党派を超えた合意形成ができるかどうか、嘉数市政の能力が問われる。
おわりに
9345票という大差で勝利した嘉数登市長は、短期間の副市長経験を活かして地元に溶け込みつつ、長年の行政経験で多方面の支持を獲得しました。
一方、下位の座喜味氏・前里氏・下地氏も、それぞれ異なるビジョンを提示し、有権者の注目を集めた場面がありました。
今後の宮古島市政では、観光と住民生活の両立、離島医療の充実、防衛問題への対応、市政の透明性と財政改革などが大きな課題となります。嘉数新市長がこれらにどう取り組み、市民の期待に応えていくのか。次の4年間での手腕が、宮古島の未来を大きく左右するでしょう。
さらに、令和8年には宮古島市の総合計画が刷新される予定です。このタイミングで島の将来ビジョンが大きく固まっていくため、若い世代が政治に参画しやすい環境づくりが欠かせません。嘉数市長が掲げる「新しいものばかり作るのではなく、今あるものをどう使うか」という考え方は、宮古島の伝統文化や地域資源を最大限に活かすうえでも重要な視点と言えます。
昔から続く暮らしのあり方を未来へ継承しつつ、ウェルビーイングな暮らしを実現する仕組みづくりを目指していきたいところです。令和8年の総合計画をきっかけに、宮古島市が若者のエネルギーと先人の知恵を融合させ、人と自然が循環できる社会構造を築いていくことを期待しています。