夢子ちゃん
8月2日の夜、「短冊に願いごとを書いて」と6歳の娘が言った。とつぜんの七夕。発想がいつも飛んでいる。
以前、通っていた保育園の園長先生に、「ひとみちゃんはみずがめ座でしょう?」と言われたことを思い出す。「そうですが、みずがめ座って何かあるんですか?」と聞くと、「夢見る夢子ちゃんって感じ」との答えが返ってきた。保育園のトップに星座をもちだされるとは思っておらず面食らったが、まだ2歳の娘の特徴をよく見抜いてくださっていたわけだ。
みずがめ座の娘は、すでに「ぱていしえになれますように。」と書き、クッキーやカップケーキ、海外のゲームアプリで出てきた色とりどりのクリームの絞り袋を描いていた。
私はもうなりたいものが思い浮かばなくて、「たくさんりょこうにいけますように。」と書いた。絵も描けといわれて、う~んと考えていると、「スーツケースとかは?飛行機とかは?」とアドバイスされる。なるほど、娘のりょこうのイメージは海外旅行か。
娘が生まれる前は、海外含めいろんなところに旅行に行った。出張の多い仕事ゆえ、47都道府県すべてに仕事で行っている。娘が生まれてからは、乗り物酔いする娘の行ける範囲で、子どもに優しいところを選んで旅している。ちょっと寂しいが、今は人生のそういうタイミングということだ。
一方で、同じ旅行先に繰り返し行くことが増えた。そのひとつが淡路島の民宿「サンビーチさつき」だ。子どもにぴったりの監視員さんのいる小さなビーチにすぐに出られる民宿で、なんとチェックイン前に入って着替えてよく、海から上がったらシャワーも使っていいという優しさの塊の宿なのだ。びしゃびしゃの子ども達が食堂を通ってお風呂に行っても、気付くとモップで床がぴかぴかに磨かれている。民宿のお父さんのきれい好きも大きな安心材料だ。
民宿のお父さんはもちろん、お母さんも、30代と思われる娘さんもまったく同じ親切さで接してくれる。この両親にしてこの子どもありで、子育てについての悩み相談を聞いてほしいくらいだ。そのお母さんが帰り際に、「毎年、今年こそやめようやめようと思っているのよね」とぽつりともらした。困る!ようやく見つけた、貴重ないきつけの宿なのだ。
焦る私をよそに、娘が明るい声で「また来るね!」と言った。大人の「続けてください」よりも、夢子ちゃんの「また来るね!」のほうがよっぽど強い。私は娘の話の突飛さに、友だちに呆れられるのではないかといつもハラハラしている。そんなこと、心配無用なのだ。面白い子だなと思いながら、私は家を清潔にして、親切に接していればいいのだ。