#5 かんざし[彫金-クローバー]SILVER925
江戸末期に南蛮貿易のオランダ船により、梱包材として日本に上陸したクローバー。クローバーの「三つ葉」と「四つ葉」をモチーフに「金沢らしさ」を掛け合わせて、かんざしを製作しました。
西洋の文化と日本の文化
西洋でクローバーと言えば、クローバーを手にしてキリスト教の三位一体を説いた、アイルランドの守護聖人聖パトリックです。クローバーの語源は、ギリシャ神話に出てくるヘラクレスが持つ3つの突起があるメイスという棍棒(club)からきています。棍棒は権力の象徴として、オーブや十字架などが付いた王笏、 また、キリスト教の司教・主教が持つ司教杖、 権杖、牧杖などの種類があります。
そして、日本の棍棒と言えば、修験者の八角の金剛杖、 お遍路さんの弘法大師の化身とされる四角の金剛杖、大日如来の智慧(金剛)があります。
加賀藩 金沢のクローバー
キリスト教と仏教の組み合わせは、加賀藩の金沢らしい主題です。
加賀藩主前田利家は禁教令のなか、キリシタン大名であった高山右近をキリスト教会の設立を条件に、加賀藩に客将として受け入れました。右近は金沢城の築城や茶の文化の普及、布教活動を26年に渡って加賀藩にて行いました。
金沢は歴史と伝統を重んじる「旧」と、革新と変化を受け入れる「新」の要素が共存する不思議な街です。
三位一体のシンボルである三つ葉のクローバー、 十字架を表す四つ葉のクローバー、そして大日如来や、弘法大師を表す「八角の金剛杖」。
かんざしの足
かんざしの足(クローバーの茎)を金剛杖に見立てて四角形で作り始め、中央から徐々に八角形に変化させ、途中で二度交差をさせています。そして、クローバーの葉へと繋がるラインを作っています。
丸い茎であればさほど難しくはありませんが、 二本の八角形の茎が互いに繋がりながら二度交差する。1.5ミリほどのライン16本を、仕上がりまでに何工程も形を崩さず、角を落とさず仕上げます。
このような作り方は機械では出来ませんので、そのすべてを手作業で行わなければなりません。
文化の街金沢で、髪を結い上げた粋な女性に日常で使っていただきたい。
そんなイメージで製作を始めたかんざしです。
銀を磨き上げた時の月明かりのような輝きや甘い色は、言葉では表せない美しさです。流行の概念を超え、時が経つほどに銀の美しさが増すようシンプルかつクラシックなデザインを心がけています。
最後までご覧いただきありがとうございました。