~森を治して地域を守る~ 治山事業
みなさん明けましておめでとうございます。
林務担当です。本年もよろしくお願いいたします。
みなさん、東京都の面積のうち約4割が森林であることをご存じでしょうか。
一般的に、東京都といえば23区内のことを思い浮かべるでしょうから、
東京都の4割も森林であるというのは意外に思われることでしょう。
実際、都内森林面積のうち約7割が多摩地域に、約3割が島しょ部に偏在しています。
(島の森林割合は三宅島で76%、御蔵島で89%と森林の割合が高いです。)
今回は森林を守る治山事業についてのお話です。
1.森林の多面的機能
森林を守る。
良い響きの言葉ですね。
善いことをしている感じがします。
そもそも、なぜ森林を守らなければならないのでしょう?
実は、森林は色々な役割をもっており、私たちに様々な恩恵をもたらしてくれています。
その役割のことを、一般に『森林の多面的機能』と呼んでいます。
上記の3つは森林の多面的機能の一例です。
土砂災害の防止、洪水の緩和や水質浄化、地球温暖化の抑止など、森林の多面的機能は私たちの生活に密接な関わりがあるのです。
最近では、CO2(二酸化炭素)の固定機能がよく取り上げられていますね。
ちょっと余談ですが、
樹を全く伐らないようにすることがエコだと思っている方がよくいますが、
CO2固定機能の促進や適切な森林管理のためには、適度に樹を伐採して木材を利用し、新たに苗を植えて育てていくサイクルの循環が重要です。
いつかその辺りについても記事を書きたいと思います。
森林の機能は他にもあるのですが、たくさんあるのでここでは割愛します。
私たちに様々な恩恵をくれる森林。
逆に考えると、今ある森林が消失してしまうと、
土砂災害や洪水が起こり、湖や海から魚が消え、地球温暖化が進行していきます。
子供たちの未来を守るためにも、森林の消失は阻止せねばなりませんね。
2.治山工事の紹介
いよいよ本題の治山事業についてです。
イメージしやすいように、
まず先に治山事業で具体的に何をしているのか簡単に紹介します。
治山事業では、山林にて「治山工事」と呼ばれる工事を行います。
荒れた渓流や崩壊地で工事を行い、
荒れた森林を健全な森林へと回復を促します。
「治山工事 = 森林を治す工事」と考えてもらうと分かりやすいですかね。
三宅支庁管内でも、このような治山工事を各所で行っています。
近年は台風や集中豪雨による被災箇所で治山工事を行うことが多いですが、
三宅島においては、前回の火山噴火の被害箇所に対する工事が今なお続いています。
3.治山事業の意義
私たち林務担当は、治山工事によって森林を健全な状態に維持しています。
しかし、治山事業の意義としては、それだけではありません。
その先があります。
治山事業は、森林の維持造成を通して、
土砂災害から地域住民の生命・財産を守るとともに、水源や生活基盤の保全を図る事業です。
森林を治すことによって、間接的にみなさんの命や家を守る事業なのです。
土砂災害を例にもう少し簡単に説明します。
治山工事を行うと、荒れた森林が健全な状態に回復します。
すると、森林が十分に多面的機能を発揮してくれるようになります。
例えば、森林の土砂災害防止機能が十分に発揮されると、
山が荒れにくくなって草木が育ち、大きく育った樹の根っこが土を山に縛りつける力によって山の崩壊が抑止されます。
つまり、健全な森林は山崩れや地すべりなど災害を予防してくれます。
結果として、治山工事を行うことが、山の周りに住むみなさんの生命・財産を守ることに繋がるのです。
今回の記事は以上で終わりです。
ちょっと話が壮大で分かりにくかったでしょうか。
植えた樹が大きくなるまで数十年かかりますから、森林関係のことは50年・100年先を見通して考えていかなければなりません。
森林についての話は長期的スパンで壮大な話が多くなりがちなのです。
最後までお付き合いありがとうございました。