三宅島における漁業後継者確保育成の取組紹介① ―三宅島で漁業者になろう!―
水産担当です。三宅島漁協が中心となって、漁業後継者の確保育成に取り組む事例を紹介していきます。
三宅島で漁業者になりたいと思っている人、必見ですよ!
2回に分けてご案内します!
漁業者が激減!
三宅島では、平成12年7月の噴火により全島民が島外での避難生活を開始しました。その後、平成17年2月に避難解除となり島民が帰島しています。帰島した漁業者の内、漁業を再開する人は少なく、平成22年に実施した組合員の整理に伴い、噴火前の正組合員172名に対し、僅か36名となりました。平成24年には正組合員41名のうち70歳以上は18名約44%となり、このままでは三宅島の漁業はどうなる?漁業者はいなくなる?衰退の一途を辿るだけ?寂しさと同時に危機感が大きくなってきました。
これからどうする?
このままでは三宅島の漁業が消滅するという危機から脱却するため、平成24年に漁業者の増大と定着を目標に漁協、漁業者、村及び都で一体となった「漁業後継者対策実行委員会」を立ち上げました。委員会では、新規就業者が独立するまでの研修制度や独立時の費用負担の軽減に関する仕組みづくりを行いました。
漁業者になりたい人!三宅島に来てください!
漁業者になりたい人をどのように探したらよいのか。平成24年から短期漁業研修事業を開始しましたが、当初は漁協のホームページ上で開催案内を行っただけで、うまく人材が集まりませんでした。平成25年からは、全国漁業就業者確保育成センターが主催している漁業を仕事にしたい人と漁業の就業者を募集したい人が集まるマッチングの場「漁業就業支援フェア」に参加し、実際に顔を合わせながら説明し、募集案内をしています。
令和2年度東京で開催された漁業就業支援フェアの様子
(ほとんど途切れることなくご案内しました。)
すぐにでも漁業者になりたい人、将来を模索している人など、漁協の担当者は、いろいろな人たちとお話ししてきました。現実は、島に来てすぐに漁業ができるほど甘くない世界です。電話やマッチングの場での説明だけでは・・・。まずは体験からです。5日間の短期研修です。島では、どんな生活?どういう漁業があるの?わからないことばかり不安がいっぱいです。
平成25年からは、短期研修の参加希望者も多く、島での対応も苦労が絶えませんでした。とにかく参加者を集めないといけない・・・。参加者の費用負担が少ないことから、本気度が・・・。漁を休んで協力してくれるコーディネーター役の漁業者もいるし・・・。村から経費を支援していただき短期研修を行っている都合、経費の無駄遣いはできないし・・・。研修参加者の本気度を事前にどこまで見極めることができるのか・・・。最近では直接、顔を合わせてお話ができる「漁業就業支援フェア」を主体にして、漁業の厳しさを伝えながら参加者の本気度を確認しています。フェアの時は2人で対応してもお話しできる人数は20名位、そのなかで本気度のある人が、短期研修に参加しています。
短期研修はどんなことをしているの?
三宅島での5日間のスケジュールは以下のとおりです。
天候等により、なかなか予定どおりにはすすみません。海の状況をみながらいつもスケジュール変更ばかりです。平成24年11月開催の短期研修では1日も海に出られないこともありました。
初日は、最初に研修中お世話になる人たちとの顔合わせをします。注意事項とスケジュールの説明を受けて、いよいよスタートです。まずは座学と島内視察です。
座学は、三宅島の漁業と生活に関する概要説明です。島内視察は、スーパーや病院、役所等、生活にかかせない場所を中心に見て回ります。都会の生活ではいつでも何でもそろうかもしれませんが、島ではそうはいきません。お店の数も少ないし、閉まる時間も早いし・・・
でも大丈夫、生活はできます。実際に生活している人たちがいるのですから。ネット通販を利用すれば、配送はだいたい内地と比較してプラス1日ってところでしょうか。便利ですよ。もちろん漁港も見て回り、荷捌きや冷蔵製氷施設などの漁業に関係する施設も見学します。
これで1日目は終了、あすは海にでられるかな。夕食後、早めに寝て明日に備えます。
2~4日目は基本的には、早朝から海に出て、午前中は漁業操業体験です。おもにキンメダイを狙う底魚一本釣りとカツオやキハダマグロを狙うひき縄釣りを行います。
港に戻ってきたあとは、水揚げし荷捌き作業を行います。荷捌き作業とは、獲ってきた魚を種類や大きさごとに分ける作業から始まります。重量を計り、発泡スチロール箱に魚をいれ、氷をかけて梱包します。漁協職員が少ないことから、漁業者の人たちも積極的に作業に加わります。午後は、コーディネーター役の漁業者から1日目の座学よりも三宅島の漁業の実践的な内容を含めた説明があります。
これまでに長期研修を修了して独立した新規就業者の人たちとの意見交換会もあります。長期研修を修了した先輩たちの話が聞けるのは、非常に貴重な体験です。短期研修生の不安が解消されていきます。仕掛けづくりやロープワークなども体験します。実際には揺れる漁船での作業となることから、短時間で確実な作業が求められます。
最終日は、研修に関するアンケートの記入作成です。この時点で長期研修に参加したいと希望する人もいますが、もう少し考えてから長期研修に望むかどうかを判断したいと回答する人もいます。
これまでの短期研修の受入実績は、以下のとおりです。
次回は、長期研修から独立までの紹介を行います。