見出し画像

【値切り放題】黎明期の過払い金請求訴訟

こんにちは、みやもとけんいちです。

先日、消費者金融で「債権回収」をやっていたことを記しました。
今回は「追い込み」の内容、と思い下書きしましたが、あまりにエグいのでボツにしました(残念)。

支店在籍時代、債権回収以外にも、あることに駆り出されていたことがありました。それは「過払い金請求訴訟」の出廷でした。


過払い金請求訴訟とは?

今さら説明する必要はないのかもしれませんが、「過払い金請求訴訟」とは、文字とおり、利用者が消費者金融会社に、払いすぎたお金を返還してもらう訴訟です。では、なぜそのようなことが起きるのでしょうか?

2つの金利

上限金利を決める法律として、次の2つの法律があります。

  • 利息制限法

  • 出資法

利息制限法とは、上限金利を制限する法律です。元本によって上限金利が以下のように定められています。

  1. 元本の額が10万円未満の場合 年20%

  2. 元本の額が10万円以上100万円未満の場合 年18%

  3. 元本の額が100万円以上の場合 年15%

政府系および銀行等民間金融機関はこの利息制限法を基準として金利を決めています。

出資法は、正式には「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法」といい、1954年に制定されました。こちらも、上限金利を制限する法律です。貸金業者は、この出資法に定められている上限金利を採用して貸付を行っていました。

私が消費者金融会社に在籍していた2002年~2005年の当時の出資法の上限金利は「日歩8銭」でした(2010年6月18日に、出資法の上限金利は20.0%になっています)。

日歩8銭とは、元本100円に対しての1日の利息のことで、年利にすると以下の通りです。

0.08%/日×365日=29.2%

利息制限法の15~20%と、出資法の29.2%との間に幅があり、この金利幅を「グレーゾーン」と呼んでいます。

出資法を基準とした金利で消費者金融やノンバンク等に返済したお金を、利息制限法に計算し直して(引き直し)、余分に支払った資金の返還を求める訴訟、これが過払い金請求訴訟です

本部より過払い金額の指示

ある日、本部の法務部より過払い金請求の訴訟への出廷依頼がありました。
同時に、過払い金返還可能金額の提示も。

つまり本部は、出資法での取引履歴を、利息制限法で引き直し、過払い金額を算出していることとなります。なお、私が出廷した事案の時本部が提示した過払い金返還可能金額は、15万円でした。

第1回過払い金請求訴訟

当時、明石の支店に在籍していて、出向いた裁判所も、明石の簡易裁判所。
出廷し、債務者の代理人である司法書士とともに、調停委員に促され別室へ。

本部より指示された過払い金返還可能金額は15万円。それ以内に先方を納得させなければなりません。

当然、15万円では話をしません。この時点で、司法書士が「NO」といえば、ジ・エンドだからです。
ここで行ったのは「値切り作戦」

調停委員を交え、「10万円でいかがでしょうか?」と私。
こちらは呑気に長期戦で、と考えていたので、手始めに10万円からスタート。いきなり話がまとまるとは思っていないので、余裕が。

司法書士も「なんとか上乗せできませんか?」
まだ、過払い金請求訴訟がメジャーになる前でしたので、折衝も気のせいか「牧歌的」でした。

「いやぁ~」と頭をかく私。
予定通り、1回目の訴訟はまとまらず。
1ヶ月後に2回目を行うことが告げられ、退廷。

支店に戻り交渉結果と次回出廷日を本部
に報告。
「来月もよろしく」と本部。気楽なもんや。

第2回過払い金請求訴訟

およそ1ヶ月後、再戦w

「上積みありましたか?」と司法書士。
「いやぁ~」と頭をかく私。
ここまでは前回と同じ。

「少々お待ちください、本部と掛け合ってみます」と演技。いったん別室を出て、本部へ電話をかける(ふり)を。
「何とかなりませんか?」「お願いします」と本部交渉(のポーズ)

「本部と掛け合って、12万円を勝ち取りました!」と司法書士に伝える(ようやる)。
「仕方ないですね」と司法書士。
司法書士にとっても過払い金請求訴訟で時間を取られたくなかったんでしょう、12万円で承諾してくれました。

先方にとっては前回より2万円の上積みを勝ち取ったんだし、こちらにとっても3万円抑えられたんで双方万々歳
これも黎明期の過払い金請求訴訟だったんでなせる業。
もう少し遅かったら、有無も言わさず根こそぎ持っていかれたことでしょう。

支店に帰り、結果報告。
「ようやってくれた、ご苦労さん」だけ。
これだけかえ!!

【私見】過払い金請求訴訟について思うこと

私の出廷した過払い金請求訴訟は、弁護士法人や司法書士法人がCMをバンバン打つ前の「黎明期」でしたので、どこかのんびりしたところがありました。
最高裁で判決が出て以降、過払い金請求のCMを見ない(聞かない)日がないくらいテレビ・ラジオで流れていたのは記憶に新しいと思います。

最後に、過払い金請求訴訟について思うことを。
あくまで私見であることをご容赦ください。

消費者金融と契約まで交わし、資金交付により債務者は、それなりの利益を享受しているはずです。第三者の「入れ知恵」により、過払い金請求訴訟を起こすのはいかがなものか、と考えてしまいます。

その後、一部ではあると思いますが、過払い金請求訴訟を起こした債務者と、入れ知恵を授けた第三者との間に、トラブルの発生があった話を聞いています。

私自身、ずっと「貸し手側」にいたせいもあるので余計に思うのですが、「借り手側」においても、利用すればどのようなことが待ち受けているのかをじっくり考えて、責任をもって利用していただきたいと、切に願います。

私の知見を必要とする機会があれば、これからも執筆したいと考えています。お仕事のご依頼はお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。



いいなと思ったら応援しよう!