子犬の爪
子犬は体に触れることに関する色々なことが極端に苦手で
小さい小さい頃から触られるのはあまり得意ではなかった。
今はなんとか信頼を獲得していちゃいちゃ出来るわけだけど
子犬のストレス反応に出来るだけ早く気づいてストレスにならない範囲で触れ合おうと気をつけている。
服を着せることに大苦戦したが、柔らかい服に変えたことでやっと服を着られるようになった。
寒い時間の散歩へのハードルがある程度下がって一安心したところだ。ただ雪の中に連れ出すにはあまりに心許ない服なので不安がなくなったわけではない。
一旦服の心配が先送りになり残った心配は爪切り問題だ。子犬は爪切りが怖いし私も怖い。私が怖ければ子犬も当然怖い。ということで少し前に一旦トリマーさんにアウトソーシングしてみた。
トリマーさんに預けて迎えに行った際、「暴れたりしませんでしたか?」と聞いたら「爪切りの時は、そうですね。なのでできる範囲でやりました」と答えていた。
私はご迷惑をおかけしてすみません、と言って店を出た。
心の中は子犬への申し訳なさでいっぱいだった。客に正直に暴れたと言うからには相当暴れたのだろう。子犬は相当怖かったのだろう。同じ怖いでも家で私がやってあげる方が怖さが和らぐに違いない。やはり自分でなんとかしなくては。
とはいえ私が爪切りを怖いのは恐らく治しようがないため、少なくとも私にとって怖くない方法を、と思い、電動爪やすりを購入してみた。これなら少なくとも私はうっかり子犬の爪を深爪する恐怖に怯える必要はない。
そして慣らし訓練を始めた。
が一向に慣れやしない。子犬はビクビクして私に手を差し出す日々が続いた。(電動爪やすりを右手に持ち、子犬にお手をしてもらい左手で手を握ったらトリーツをあげる練習)暴れたり逃げたりせずに子犬なりに恐怖と戦ってくれているが、あまりにもストレス反応が強いので、私も心折れて、今度は普通の手動爪やすりを買ってみた。
同じように慣らし訓練をする。当然ストレス反応は少ないが、それでもあるのだ。ただの金属の棒が爪に一瞬触れるだけなのに。
少し悩んだところでまた信頼のおけるドッグビヘイビアリストさんの関連YouTubeを視聴していると、「特段の事情がなければ散歩してれば削れるから、うちは爪切りはしてない」とおっしゃっていて
(しかし老犬になって散歩に行けなくなった時に切る必要があるため切れるよう訓練しておくことは大事と言っていた)
爪切りしなくても良い可能性について考えた。
実際のところうちの子犬は地面と平行気味に爪が生えるので散歩で爪が短くなるほど削れはしない。しかし下の方はしっかり削れるし、放置して多少鋭利になることはあっても伸び続けることは恐らくない。爪の下半分はガッツリ爪の層が見えている状態なので神経が伸びることもないはずだ。
少なくとも、爪問題を焦って解決する必要はないのかもしれない。
そう考え始めた。
そんな昨夜、私はいつものように上手く眠りにつけずに考えごとをしていた。いつもだったら敢えて考えるのを避けていた内容について考えた。
子犬を看取る時についてだ。心が張り裂けるほど悲しいはずだ。その正確な予感に胸が苦しくなったとき、前の子を看取ったあの時の後悔を思い出した。
前の子を看取ったとき、私は過去に躾のために叩いてしまったことがあることを思い出して愛犬であり親友であるその子にあの時はごめんと言った。そしてありがとうと何度も言った。
そして私は強く心に誓った。私はこの私のちっぽけな力を精一杯使って全身全霊で子犬の人生を幸せでいっぱいにしよう。出来るだけ隅々まで楽しいことや幸せなことで満たそう。
だからまずは、どれだけ時間をかけても良いから楽しいことの延長で爪やすりをかけられるようになろう。
苦手なことはみんな、いっぱいいっぱい時間をかけてゆっくり嬉しいことに変えよう。
そう心を新たにして今日もちんたら楽しい慣らし練習をした。