遠い記憶 第六話
その長屋も、2~3年ほど居ただろうか?
後から、思うと、父の酒乱の為、居られ無かったのだろうと、
容易に、推測される。
小学校上がる、一年ぐらい前に、
市内で、唯一大きな神社の、社務所に移り住む。
大きな、鳥居があり、正面に横に広い石段。
登ると、正面に本殿、右手に社務所その右手に、外トイレ。
何分にも、社務所ですので、
人が、住む様には出来ていない。
12畳ほどの、二間、台所と言うほどの、立派な物ではないが、
タイル作りの、洗い場。
少し高台に、ある為、水道はあるが、水圧が足りない。
家事仕事を、するには、間に合わなず、
大きな、ポリバケツを置き、常に流し貯めていた。
その、社務所には、風呂など無く、裏に五右衛門風呂一つを
置いただけの物、
他には、何も無い、雨が降ったら傘をさして、浸かった物だった。
家賃は、タダ、その代わりに、社務所の管理と、お掃除が、
家賃代わりだった。
毎日、境内の掃き掃除に、本殿の拭き掃除、
やっても、やっても、尽きない。
遊んでる暇など、無い。
又、夕方は、五右衛門風呂を、洗い、水を入れ、
蒔き割りと、風呂焚き、
上手く火が付く時と、付かない時があり、
上手く付かない時は、思わず泣きたくなった物だった。
今になっても、思うが、小学校1年生に、入るか、入らないかの女の子の、
私が、良くやった物だなぁと、今さらながら思う。
父の、酒乱は収まる事は、無かった。
それに、つれて母の、顔つきはどんどんときつくなって行った。
その鉾先は、何故か私に向けられて行った。