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股関節トレーニングプログラム
股関節に必要な機能を考える
股関節は寛骨の寛骨臼と大腿骨頭によって構成される球関節であり、それぞれの方向に作用する筋肉の働きによって寛骨と大腿骨頭の位置が変化することにより、ランニング、ジャンプ、キックなどスポーツに求められる多様な運動が可能となります。
その反面で股関節は骨盤を介して脊柱とも連結し、機能不全を有する場合には近接する腰椎での代償を招きやすいため腰痛などの発生率が高いことも事実ではあります。
股関節の重要性は一般的にも認知度が高く、股関節が硬い。股関節を使えるようになりたい。という声を耳にする機会は多くあります。
では実際に股関節の機能を向上させるトレーニングをする上で理解しておきたいポイントとはどんなものがあるでしょうか?
数あるトレーニングの中でも股関節に対する意識を高める動作として、パワーポジションやヒップヒンジといったものがあります。
中でも股関節を曲げるヒップヒンジはトレーニング指導の現場でも利用されている印象があります。
では股関節を曲げることは漠然と機能改善には良い印象がありますが、具体的にはどういった効果があるのでしょうか?
まずはヒップヒンジについて考えていきたいと思います。
1.ヒップヒンジとは?
1-1.骨頭被覆率の上昇
ヒップヒンジとは股関節屈曲の動作を指し、前述したパワーポジションの獲得につながってきます。しかし、トレーニング指導の現場では動作の習得にも難渋する場面に遭遇することはないでしょうか。
前述しましたが、股関節を使える=股関節を曲げるというイメージがあるかと思います。
ヒップヒンジは固定された大腿骨に対して骨盤が前傾することで股関節屈曲位となり、寛骨臼が大腿骨頭に被覆することで骨頭被覆率が上昇し、関節構造的に非常に安定した状態となります。
寛骨臼は寛骨外側面に存在する半球状の関節窩で、線維軟骨である関節唇によって更に大腿骨頭の安定性に寄与しています。
股関節屈曲90°屈曲/軽度外転位
→大腿骨頭が臼蓋に完全に被覆される
引用 | 股関節拘縮の評価と運動療法
そのためヒップヒンジの目的の一つとして大腿骨頭と寛骨臼の被覆率を上昇させ、股関節の関節構造による骨性の安定性を向上させることにより、股関節屈曲位であるヒップヒンジを獲得することは必須であると考えられます。
しかし、臼蓋形成不全などを有する場合には大腿骨頭の被覆率を上昇させるために骨盤前傾位となり、過剰な腰椎前弯を発生させる要因になると考えられます。
また股関節屈曲可動域は130°程度とされていますが、実際には寛骨と大腿骨による寛骨大腿骨関節では70°程度、残りは腰椎後弯と骨盤後傾を含めた角度という報告もされています。
股関節を最大屈曲させるフルスクワットのような動作が求められるスポーツ(野球のキャッチャーやバレーボールのレシーブなど)においては腰椎後弯や骨盤後傾も考慮したトレーニングを考慮する必要があるのではないでしょうか。
一概に股関節を曲げるといっても目的に合わせたアプローチが求められることになります。
1-2.股関節伸展筋群の伸張
2つ目の目的としてヒップヒンジによって股関節伸展筋群である大殿筋とハムストリングスに対する伸張(ストレッチ)の刺激が加えることが可能になります。
股関節屈曲位では股関節伸展筋群である大殿筋、ハムストリングスが伸張されます。
筋力の爆発的な発揮には、筋肉が伸張(遠心性収縮)から短縮(求心性収縮)する伸張反射を利用することで爆発的な力の発揮が可能になります。
ランニング、スプリント、ジャンプなどでは身体重心の推進、上昇を伴う動作を向上させるためには股関節伸展筋群の役割は非常に重要になります。
そのためスポーツにおけるパフォーマンスアップにつなげるためには大殿筋、ハムストリングスが伸張位となる股関節屈曲位を獲得することは必須であると考えられます。
1-3.ヒップヒンジの獲得 | 腸腰筋機能の向上
ではヒップヒンジを獲得するためにはどのような機能が求められるのでしょうか?
股関節を曲げてくださいと伝えても、なかなか上手くできないパターンに遭遇することは多々あります。
見受けられるエラーパターンとして股関節屈曲が出来ずに腰椎が後弯してしまい腰痛を訴えるパターンです。
これは屈曲型腰痛を有する方に非常に多く見られるエラーパターンであり、股関節を曲げるなどキューイングで動作の改善が見られない場合には、股関節周囲の機能不全を有している可能性を疑います。
1-4.腸腰筋による股関節屈曲
ここでヒップヒンジに求められる機能について考えていきたいと思います。
ヒップヒンジのように固定された大腿骨上の骨盤の前傾には腸腰筋や大腿直筋といった股関節屈筋群の求心性収縮が求められます。
この腰椎後弯は腸腰筋などの股関節屈筋群の機能不全による代償と考えると、代償を有するままデッドリフトなど股関節屈曲トレーニングを行ってしまうと、脊柱起立筋などの遠心性収縮による制御となるため腰部に痛みを生じる原因となってしまいます。
股関節屈曲で重要になる筋肉として腸腰筋が挙げられます。
腸腰筋
股関節屈曲・外旋(深屈曲位での屈曲作用が高まる)
股関節前面を走行し前方安定性に寄与する
腸腰筋は屈曲に伴い屈曲作用が増し、最終域において更に股関節屈曲作用が増強するとされています。
腸腰筋は股関節前方の深層に位置し深屈曲位で屈曲作用が高くなりますが、骨盤前傾が制限され腸腰筋の機能不全を有する場合には腰椎の後弯によって代償を発生させる可能性があります。
また腸腰筋は大腿骨頭の前方を走行するため、股関節伸展位において遠心性収縮することで、大腿骨頭の前方偏位を抑制する役割も果たします。
そのため腸腰筋の機能向上はヒップヒンジだけではなく股関節の機能を高める上では欠かせない要因となると考えられます。
1-5.ヒップヒンジ制限因子
ではヒップヒンジが制限される要因として単純に考えると骨盤前傾、股関節屈曲の可動域制限を考えます。
股関節屈曲制限につながる代表的な姿勢としてsway backという姿勢があります。
sway backは上半身質量中心は後方、下半身質量中心の前方化に伴う骨盤の後傾により股関節は相対的に伸展位となります。
また骨盤後傾位が持続すると股関節前方の大腿骨頭の被覆率が減少し、股関節前方不安性が増加して股関節屈筋群に対する遠心性収縮による制動が常に働く形となります。
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