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田酒🍶西田酒造店 | 青森

9月の訪問からなかなか書けない。

ソムリエがお客様のバックグラウンド情報を先に知ってしまうと、良いサービスを提供しなければというプレッシャーから通常の接客が不自然になり、自ら緊張してしまうように
田酒の素晴らしさをどのように表現すればよいか、その思いが強く先行しているからだと分かっている。

しかし、記事を下書きのまま放置してしまうと、田酒50周年を過ぎてしまう。

重い腰を上げて、記録を始めよう。


飛ぶように売れている。
新商品の発売には酒屋さんの前で購入を待つ人が並んでいる。
それが青森の日本酒界ライジングスター田酒である。

2020年、2022年に続き、今回で3度目の訪問となります。

2020年訪問
2020年訪問

安達杜氏から
「以前からよりパワーアップしていることを感じていただければ」
絶え間なく進化を遂げる蔵で、今回はどのような新たな発見があるのだろうか。


田の酒と書いて「でんしゅ」と読みます。
発売は昭和49年10月1日。
「田」はもちろん、酒の元となる米が獲れる田んぼを意味し、名前の通り、日本の田以外の生産物である醸造用アルコール、醸造用糖類は一切使用していないことを力強く主張した、米の旨みが生きる旨口の純米酒です。
米と水。
「日本酒の原点に帰り、風格ある本物の酒を造りたい」という一念で、昭和45年に昔ながらの完全な手造りによる純米酒の醸造に着手。その後、商品化までに3年を費やしたそうだ。

今年デビュー50周年を迎え各方面より祝福を受けた。

現在ラインナッップはおよそ30種類もあるという。

「酒米の王様」と言われる山田錦を使用したお酒だけで言っても
純米酒は精米歩合を変えて23、35、40、
45、50、55%の6種類
アルコール添加のものも含めると
約9種類と豊富である。

覚えるのも大変そうだが、レシピは全てパソコンで管理しているという。
酒造りに使われる機械は特注品も多いと聞き、いざ潜入開始。

仕込は9月から酒造りが始まって終わるのが6月
今は造りの真っ只中を迎えています。

1回で2tほど蒸せるとても大きな甑
上層と下層で蒸気の当たる時間が異なります。下層は長時間蒸されるため、お米が蒸気を吸い過ぎてしまいます。この問題を解決するために、現在は甑を3台使用しています。
造るものによって使い分けている。
放冷機
冷ました麹米を流して台車に入れてクレーンで吊り上げて室へ移動。2階から見える景色。

蔵の中では、効率的に物を配置するために、定期的に最適な場所に変更を加えています。

サーマルタンク
上槽を行う圧搾機
瓶詰め 全て瓶火入れ。クリーンルーム内では不純物など入っていないか目視での確認で細心の注意を払っています。

今回初めて拝見した蒸留器

 蒸留器は電磁波を用いた減圧蒸留で稼働します。昨年の厳しい暑さにより、米の溶解が困難になり、通常は40リットルを得られるところが約30リットルまで減少したと言われています。過度に搾り取るとアルコール度数が低下するため、適切な調整が必要です。
6Pチーズのような容器に酒粕を細かく砕いて30枚入れ、それを蒸留します。
〈西田酒造店 分析研究室〉
もともと仕込み蔵を改装した分析研究室はまさにラボ。カッコいい。

今回、麹室で聞いた話がとても印象に残りました。

9年前、月に1回の休みがあれば十分だったという。
それが日本酒業界では一般的なことでした。
西田社長は、宿泊を伴う作業をなくすために、働き方改革を行ったという。
それは作業効率をよくする為に様々な設備投資をする以前に疑問を感じていたからなのだろう。

そして、案内中に
麹室ではBGMが特に響き渡る。
クラシックやJAZZなどではなく、高校時代、ガラケーの着メロにしたそんな懐かしいJ-POPが耳に残る。

作業は静寂の中で進められる。
朝7時50分、9時50分には、麹が上がり
次の作業が待っているため、迅速に進める必要があります。

作業をする上で、音楽は有益な効果をもたらすらしい。
仕事を楽しむ】
これは、福利厚生という名の西田社長の愛だ。

2020年、
最初は何を見るべきかわからない見学だった。

2022年、
何を聞くべきかわからない見学だった。

今回も全てを理解するのは不可能だが、

「蔵が酒を造る」という言葉は
杜氏だけではない、チームワークで物事が進んでいるということ。
どの業界も人間同士が絡み合って業務が進んでいることは同じだと思います。

視覚、嗅覚、触覚、そして聴覚によって、
これから体験する五感の味覚が、より豊かに感じられるような見学でした。


今年大きく変わったこと

それは
「床全面ペンキを塗ったこと。」

という。

え?分析研究室じゃないの?
と思いましたが
私たちは消費において派手な出来事を期待しすぎているのかもしれません。
現場は常に緊張感があります。
毎年、より良いものを作り出すためには地に足のついた仕事をどれほど真剣に行うかではないのか。
そのための床は踏ん張りどころを支えている。

さすが西田酒造店。
おみそれしました。


令和6年東北清酒鑑評会
吟醸の部、「喜久泉」が最優秀賞を受賞されました。
おめでとうございます。



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