見出し画像

会ったこともない人に自分の人生を振り回される。


私が生まれる3年前の出来事。


その子は夜中に生まれ、産声をあげることなく空に帰った。男の子だった。


男の子が欲しかった父は嘆き悲しみ、後に生まれた女の子の私に、車や機関銃のオモチャを買い与えた。


私が欲しがったお人形や縫いぐるみは買い渋ったが、車や機関銃は見るからに値の張りそうな立派なものを買ってきて、嬉しそうに私に手渡した。


欲しくもないオモチャ。子供の気持ちなどどうでも良かったらしい。


「子供を失った可哀想な父親」としての立ち位置が大事だったのだろう。自分だけ、文字通り「死んだ子の年を数える」悲しみようで、家族の目の前でその話をしては泣いた。


子供を産んだ母を気遣うことはなかった。母もまるで人ごとのように聞いていた。


私が今から男の子になれるわけはなく、生まれてすぐに亡くなった兄に文句も言うこともできず、理不尽で絶望的な思いを抱えて育った。

サポートされたらめっちゃ喜びます!