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何度も同じ夢を見る。

苦しくて目が覚めた。声が出ない。喉がカラカラに乾いて、口で大きく息をしている。目を見開き、拳は固く握りしめたまま。

 

「またこの夢だ。」


ここのところ何度も同じ夢を見ている。しばらくは収まっていたので大丈夫だと思っていたのに。怖い夢。超がつくほどの怖がりで、怖いものはもともと苦手なたち。幸いなことに霊とかそういうのは見えないが、それでも怖いものは怖い。


いつだったか、怖いのがへっちゃらな家族がテレビでホラー映画なんて観るものだから(昔はテレビでホラー映画の放送があった)私もうっかり観てしまい、あまりの怖さに頭から布団をかぶり、ガタガタ震えて眠れなかったことがあるくらい、怖いものはダメなのだ。


そんな私なのに、見る夢はなぜか怖い夢が多い。「遊園地で遊んでいて、大きな暗い穴にどこまでも落ちていく夢」とか、「実際には怖くもなんとも無い場所なんだけど、夢の中ではそこに行くと(しかもなぜか必ず夜)誰かにじっと見られていて、でも相手の姿は見えない夢」とか。


今回の夢はそういうのとはちょっと違う。人間は誰も出てこないのだ。もちろんオバケの類も出てこない。出てくるのは電車。それも機関車トーマスみたいな世界。出てくるのは私ひとりで、縦横無尽に走る線路の上で電車に追いかけられ続けるという夢。


逃げても逃げても、次から次から電車が現れて追いかけてくる。冷静に考えれば、こんなことはありえないんだけど、毎回こういう夢を見る。


怖くて怖くて、でも誰も助けてくれないし、私の他には誰も出てこない。周りの景色はキレイでかわいいのに、わたしひとりが恐怖に引きつった顔をして逃げ回っているという…。


しばらくして、私はあることに気づく。この夢は怖いけれど、私は電車に轢かれることはないんだって。なんだ、大丈夫じゃんって思ったんだけど、この時の私は知らなかった。こんな夢を見るほど、自分が精神的に追い詰められているということを。


夢占いで調べてみると「追いかけられる夢」は現実から逃れたいという欲求の現れだと書いてあった。この時の私はまさにそういう状態だったわけだ。


父は元鉄道員。〇〇電鉄に40年勤め、定年後系列会社に嘱託で働いていた。束縛の激しい人だった。


学校を卒業して社会人になった時、たまたま最寄り駅が同じだったせいで、通勤の行きも帰りも父と一緒になった。家から駅まで父の運転する車で行き、同じ電車に乗り、帰りも、父が私の終業時間まで時間をつぶして待っていて、一緒に帰った。


娘と一緒に通勤するのが嬉しそうだったが、私は息苦しかった。なんとかこの状態から抜け出そうと、原付バイクを買って、それで通勤するようにした。


車の免許は持っていたので、すぐにバイクに乗れるようになったのだけれど、その免許も、父が助手席に乗っていちいち指図をするから、嫌になって乗らなくなっていたものだった。こんなときに役に立つとは思わなかった。


バイク通勤をするようになって、あの夢は見なくなった。それ以来一度も見ていない。もちろん、もう二度と見たく無いけどね。




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ひろよ65歳@カリンバ弾き
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