知っておきたい肝臓の基礎知識
私達は食事により、身体機能を維持するための栄養やエネルギーを補給している。三大栄養素である糖質・たんぱく質・脂質の代謝によってエネルギーが生じることはよく知られているが、実際にはATP(アデノシン3リン酸)が加水分解でADP(アデノシン2リン酸)へ変化するときに、エネルギーが生じている。
代謝それぞれの代謝経路を経てATPが生産されるが、こうした代謝と深い関係を持つのが肝臓だ。代謝の詳細は過去にもnoteで紹介しているが、ここでは肝臓の働きにフォーカスするとともに、肝臓を起点に起こる身体のエコシステムについて解説していきたい。
(1)糖代謝
糖は消化管で分解され、小腸で消化酵素のアミラーゼにより、単糖類(グルコース、フルクトース、ガラクトース)まで分解される。これらは門脈を通り肝臓、そして全身をめぐり余剰分は肝臓に戻ったのち、グリコーゲンとして貯蔵される。これがいわゆる肝グリコーゲンである。
血液中のグルコース量が低下、つまり低血糖の状態ではグリコーゲンがグルコースへ変成され、血中へ放出される。この時、筋肉中のグリコーゲン(筋グリコーゲン)は血中へ放出されず、筋活動にのみ使用される。
しかし、低血糖状態がさらに悪化していくと、肝グリコーゲンは約半日で貯蔵分を使い切ってしまうとされており、他からグルコースを調達する必要が生じる。主な調達先となるのが、筋と脂肪組織である。
筋では、ピルビン酸から乳酸が使用される。もうひとつは、筋中のたんぱく質を分解しアミノ酸が消費される。脂肪組織は、トリグリセリドからグリセリンが消費される。この一連の反応が「糖新生」である。
(2)たんぱく質代謝
たんぱく質は消化酵素により、20種類のアミノ酸へと分解される。こうして生成されたアミノ酸を、全身の細胞へと供給するのが肝臓の役目だ。
体内で古くなったたんぱく質は、再度アミノ酸へ分解。新たんぱく質の材料となる。すべてのたんぱく質がアミノ酸へ分解されるわけではなく、一定量がATPとして活用される。アミノ酸の分解過程では、代謝産物としてアンモニアが発生する。
体内には有害なアンモニアを、肝臓は尿素へと分解。尿素は腎臓へ運搬され、尿として排出される(解毒作用)。
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